前回までのリーンスタートアップの基礎的な解説に続き、今回からは実際の現場で活用できる実践的な内容を解説します。リーンスタートアップのような新しい文化を組織に導入するためには、ある種のコツが必要です。導入を妨げる原因を失敗事例から学び、的確にレバレッジすることで、導入ハードルを軽減するのです。各パターンをご自身の組織に置き換えながらご一読下さい。

価値創造フレームワークである「ビジネスモデル・キャンバス」を、書籍『ビジネスモデル・ジェネレーション』の訳者でコンサルタントの小山龍介氏を講師に迎えて、ワークショップで解説致します。20名限定での講義+演習スタイルで開催です。
■日時:11月2日(金)13:00-17:00 (12:30-開場)
■場所:株式会社翔泳社1Fセミナールーム(東京)
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既存事業の成功体験という「常識」の呪縛
企業内においてリーンスタートアップの実践と定着が困難になるパターンの背景には、企業内に必ず存在する「常識」が大きく影響しています。リーンスタートアップの考え方は、それまでシリコンバレーで「常識」と考えられていた新規事業開発手法を根底から覆すものでした。多くの創業者や投資家が当たり前だと思っていた常識、つまり過去の成功事例から学びそれを模倣することこそが、数多くの失敗事例を生み出す原因だったのです。リーンスタートアップがなかなか実践に移せない、もしくは定着しない組織では、これと同じ現象が起きています。
つまり、既存事業の成功体験という「常識」に囚われているのです。
既存の収益事業が存在する企業では、基本的に社内のさまざまな規定や評価基準は、既存事業の維持、発展、収益拡大に対して標準化されています。事業部門にかぎらずバックオフィス業務においてもこの考えは統一され、規定が広く認識されて徹底されるほど、既存の収益事業に対してはとても強い組織が形成されます。このような行動基準は明文化された規定や基準以外にも暗黙知として存在するケース数多く存在し、総合的に経営者の判断基準や社員の行動に対して影響を及ぼすのです。
しかし、新規事業開発とはすべてが未知への挑戦です。このように行動すれば必ず成功するという「常識」が存在していないのが、新規事業開発の初期段階における「常識」です。それでも企業が新規事業開発を行う際には、つい既存事業の常識を適用してしまいがちです。
既存事業に沿った規定や基準そして暗黙知は、やがて新規事業開発にとっては制約条件となります。制約条件の存在は組織の行動に規律を求めるようになり、リーンスタートアップのような柔軟な対応を基本とする考え方とは相反することになるのです。
しかし、考え方ひとつでその制約条件の影響範囲は大きく変わってきます。既存事業に適用している常識を変えてみることで、リーンスタートアップは大きく加速するのです。

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和波俊久(ワナミトシヒサ)
"Lean Startup Japan"ブログ主宰者。 IT企業でITサービスマネジメント及びプロジェクトマネジメントのコンサルタントを務める傍ら、数々のITプロジェクトの失敗やデスマーチを経験。リーンスタートアップを広く普及するために、2010年10月より&...
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