オープンシステムの台頭からビッグデータ時代へ
さて、時は移って1990年代。IT業界には、UNIXワークステーションによるオープン化とダウンサイジングの嵐が吹き荒れる。そんな中、一気にメジャーの舞台に踊り出たのが、皆さんおなじみのオラクルだ。UNIX上で動くRDBMS製品のデファクトスタンダードとして、オラクルのRDBMS製品は当時売れに売れた。この勢いには、メインフレームビジネスで豊富な実績を持つ日立でも1993年からOracle7の取り扱いを始める。
ところが面白いことに、このことがきっかけで、日立は自社でオープン系RDBMS製品を開発する決意を固めることになったのだという。
「当時のUNIXマシンは性能がまだプアで、日立のお客さまの求めるミッションクリティカル要件に応えた(UNIX上の)データベース作りは、メインフレーム時代からの日立のノウハウを活かすべきと考え、開発したのがHiRDBでした」(石川)
なるほど、HiRDBはそんな出自を持っていたのか。そのアーキテクチャも、シェアードナッシング型で複数マシンによる並列分散処理と、当初から大規模基幹系システムでのパフォーマンスを重視した作りになっていたというから、オープン系データベースとはいっても、そもそもの誕生から海外製品とは一線を画していたわけだ。
2000年代に入っても、日立は次から次へとデータベース製品を開発していく。2005年に開発された組み込みデータベース「Entier」は、カーナビに搭載されるデータベースとしてはトップシェア(*1)を誇る製品で、現在ではカーナビ以外にもさまざまな家電や電子機器に組み込まれて利用されているという。
さらには2000年代後半、クラウド・ビッグデータ時代に入っても、日立は頑なにデータベースの自製を止めない。それどころか、ますます開発に熱が入っているようにすら見える。2008年にはビッグデータのリアルタイム監視にも使えるストリームデータ処理基盤「uCosminexus Stream Data Platform」、2010年にはHiRDB内のデータを分散処理できるバッチジョブ分散実行システム「uCosminexus Grid Processing Server」、そして2012年にはインメモリ型分散KVS「uCosminexus Elastic Application Data store」をリリース。さらに2012年5月には、従来比約100倍(*2)のデータ検索性能を発揮する、国立大学法人東京大学との共同で推進している超高速データベースエンジンの研究開発成果(*3)を次世代高速データアクセス基盤「Hitachi Advanced Data Binder プラットフォーム」という製品として、発表したばかりだ。
(*1)日立ソリューションズ調べ。2010年時点での、カーナビでの地図データ管理用途で採用された組み込みシステム向けRDB製品として。
(*2)日立製作所調べ。解析系データベースに関する標準的なベンチマークを元に作成した、各種のデータ解析要求の実行性能を計測。
(*3)これらの技術には内閣府が創設した最先端研究開発支援プログラムで採択された「超巨大データベース時代に向けた最高速データベースエンジンの開発と当該エンジンを核とする戦略的社会サービスの実証・評価」(東大、日立)で技術開発された成果が反映されている。