イノベーションの速度が世界的に速まり、“人間中心”がキーコンセプトになったデザインの手法を用いることが求められてています。ビジネスの現場やデザインプロセスそのものも、多くの仮説を出し、多くの失敗ができるよう、スピードアップが必須です。デザインプロセス自体を、販売開始前にオープンにしてしまうケースもあります。今回は、そうしたデザインプロセスの変化について解説していきます。
ペルソナなんて作って、それからどうするの?
最近、打合せの場でクライアントの方たちとお話ししていて、自分でもあらためて自覚したのですが、サービスや商品を考えるデザインプロセスのなかで、ユーザーモデルとしてのペルソナをつくることがほとんどなくなっています。
もちろん、人間中心の姿勢を失ったからではありませんし、ターゲットユーザーをイメージせずにサービスや商品の企画を考えているわけでもありません。
ペルソナを作らなくなった理由は、むしろ、それとは正反対のものです。
というのも、ここ最近のプロジェクトでは、サービス/商品の企画をする際に、将来的な利用者と想定される方にその場に参加してもらい、一緒にサービスや商品のアイデアを見当するケースが増えているからです。実際の利用者に参加してもらっているのですから、ペルソナというユーザーモデルを作る必要がないのです。

ユーザーにデザインプロセスへ参加してもらう場合、たとえば、考えたアイデアをすぐにその場でスケッチにして、対象者に見せることがあります。
スケッチにすると、こちらが考えていることがユーザーに伝わりやすくなるだけでなく、ユーザーからアイデアに関する評価がすぐその場でもらえます。さらには評価だけでなく、ユーザー自身が、それをどんなシーンで実際に利用しようと思ったか、使う際の問題点なども聞けたりします。スケッチで見せたアイデアに問題がある場合は、ユーザーの方から、もっと良いアイデアを出してもらえることが多くなります。
こうした対話を、ユーザーモデルであるペルソナに期待することはできません。そのようなこともあって、最近関わったプロジェクトのなかで、ペルソナを作る機会がめっきり減っているのです。
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棚橋弘季(タナハシヒロキ)
棚橋弘季(たなはしひろき) 株式会社ロフトワーク所属。イノベーションメーカー。デザイン思考やコ・デザイン、リーン・スタートアップなどの手法を用いてクライアント企業のイノベーション創出の支援を行う。ブログ「DESIGN IT! w/LOVE」。著書に『デザイン思考の仕事術』 など。
※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です
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