前回は、八方塞がりの日本企業が進化しなければいかない理由を、デジタル化、グローバル化の脅威という観点で説明しました。今回は、日本企業の進化の方向性を全体像として概論し、その一つ目である「ビジネスモデル」に関して解説いたします。
過当競争で消耗する日本、寡占市場で固定費を回収する韓国-消耗戦の回避
前回述べた環境変化や脅威のなかで、日本企業はどのようにして生き残っていくのか?という本連載の本題に入ります。デジタル化や、グローバル化などの外的要因は避けられない。では、日本企業はどのように生き残り、進化をしていかなければいかないのかを考えていきましょう。
いろいろな日本企業の進化の方向性はあると思うのですが、大きく4つに分けられると思います。1つ目は「ビジネスモデル」、2つ目は「生態系(エコシステム)」、3つ目は「価値設計」、4つ目は「オペレーション」です。
今回の記事では、1つ目の「ビジネスモデル」に関して、更にいくつかのポイントを挙げてきます。
まず、ビジネスモデルの1つ目は、経営レベルや国策としての課題にもなりますが、「企業・事業統合を含めた消耗戦の回避」というポイントです。

例としては、過当競争により母国市場で消耗戦を繰り広げる日本勢と、寡占市場である母国市場で固定費を回収する韓国勢の比較が、対照的でわかりやすいかと思います。
ご存知のとおり、いわゆるIMF危機以降、韓国市場はかなり寡占化が進んでいます。それを活かして、電機や自動車、重工などの韓国企業は、韓国国内で実は一番高く製品を売っています。家電製品でも、サムソンなどの韓国メーカーは、国内市場向けは高い値段で売っていますし、自動車でも韓国国内でオプションを買うときには、エアーバッグとサンルーフのセットじゃないとオプションすら付けられない、といった状況です。
こうした結果、国内市場は小さいですが、韓国メーカーは母国市場で十分な利益を上げて固定費を回収しています。その余力で、欧米などの海外市場向けには製品を安価で提供し、シェアを上げていくというモデルです。
韓国勢のやり方はアンフェアに見えるかも知れませんが、すでに十分押えている市場で利益を上げて、競争が激しい市場に事業リソースを投下するのは、かつてのセブン・シスターズ(石油メジャー)が台頭した時期と同じやり方ですし、古くは日本の戦国大名(毛利元就、武田信玄、織田信長など)も同じ戦略を採っていました。
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ベイカレント・コンサルティング 萩平 和巳(ハギヒラ カズミ)
株式会社ベイカレント・コンサルティング 代表取締役社長。 京都大学にて情報工学を修了。 三菱商事(IT部門、戦略IT事業会社立上げ)、 マッキンゼー&カンパニーBTO日本共同代表を経て、 2011年にベイカレント・コンサルティングに入社。 2012年3月より現職。
※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です
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