「実践知リーダーシップとアジャイル/スクラム」-野中郁次郎氏が国内最大のスクラムイベントで講演
■「Scrum Alliance Regional Gathering Tokyo 2013」基調講演レポート
「スクラム」の名付け親であり、日本を代表する経営学者である一橋大学名誉教授の野中郁次郎氏が、革新を生み出す創発的な組織の要件と「賢慮型」リーダーの条件について解説した。また、日本のアジャイルソフトウェア開発の牽引者である平鍋健児氏をナビゲーターとした質疑応答の様子を紹介する。
戦略と組織をダイナミックに統合する「ストラテジックなマネジメント」

1980年代、世界で高い競争力を誇った日本の製造業における組織と開発手法は、野中郁次郎氏、竹内弘高氏によって分析され、1989年に発表された論文“The New New Product Development Game”で「Scrum(スクラム)」と紹介された。その柔軟で自由度の高い日本発の開発手法は海を超え、ソフトウェア開発の手法として欧米では広く普及している。
「もともと知識創造理論はアジャイルと関係なくやってきた」という野中氏。しかし、アジャイルが組織変革のプロセスそのものにまで展開されつつあるという分析に、その一手法である「スクラム」の可能性の大きさを強く実感しているという。
近年、改革を生み出すために不可欠なものとして「戦略」が重視されている。欧米では伝統的に「組織」と分離して考える傾向にあり、日本でも「戦略流行り」だ。しかし、どんなに優れた戦略を立てても、組織が実行できなくては意味がない。つまり、戦略と組織をダイナミックに統合する「ストラテジックなマネジメント」が求められる。
「ストラテジックなマネジメント」の枠組みは、絶えずイノベーションを生み出すコミュニティだという。企業ビジョンとして「共通善」が存在し、さらにそれを組織全体に落とし込んだビジネスモデルがある。そこには「ユニークな価値を顧客に提供すること」という価値命題があり、その実現のために必要な知識を提供し続けるのが「SECIプロセス」というわけだ。
「SECIプロセス」を支援するプラットフォーム(場)では、顧客や自社の能力が相まって知を利益に変化させ、コスト構造などを勘案してビジネスの流れにつなげていく。これら全てをまとめるのは「フロネティック・リーダーシップ」だ。

*注:フロネシスの語源はギリシャ語で賢慮(Prudence)と実践的な知恵(Practical Wisdom)を併せたもの。
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伊藤真美(イトウ マミ)
フリーランスのエディター&ライター。もともとは絵本の編集からスタートし、雑誌、企業出版物、PRやプロモーションツールの制作などを経て独立。ビジネスやIT系を中心に、カタログやWebサイト、広報誌まで、メディアを問わずコンテンツディレクションを行っている。
※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です
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