検討段階で重要度分析を行い、全体最適化を精査
企業のシステム環境に広く普及している仮想化だが、ITインフラの高信頼性、高可用性へのニーズの高まりから、サーバー、ストレージ、ネットワークを含めた仮想化環境の全体最適化が強く求められている。そのためには、まず仮想化のメリットを最大限に引き出すための仮想化インフラと運用管理の見直しが重要だ。
今回のセミナーではNTTデータと日本通運のユーザー事例が紹介された。いずれも社内システムを全面的に仮想化へと移行した事例となる。
まずはNTTデータ ITマネジメント室 課長の佐野祥一朗氏が登壇。NTTデータ社内では大小合わせて70以上のシステムやアプリケーションがあり、それぞれに独自にサイロ化した状態で乱立していたため、共通部品の再利用性が低い、運用設計が異なるため管理が複雑化しているなどの課題があった。そこで、2009年度から全システムに共通の社会システム共通基盤を構築して統合化することを検討しはじめ、現段階ではほぼ最終段階にある。
検討段階で重要となるのが現状分析だ。NTTデータでは業務重要度を分析した。業務システムを全て洗い出し、重大性(会社の存続に影響があるか)と緊急性(影響が即座に生じるか)で業務重要度を分類した。次に業務とシステムの対応関係をマッピングするアプリケーションマップを作成。同じシステムでも異なる業務に渡っているものはシステムの分割、逆に同じ業務に複数のシステムが割り当てられているものはシステムの統合を検討した。現状分析とともに既存システムの整備も行った。さらに業務重要度に応じて可用性レベル定義を行い、業務重要度の高いものは冗長化し、そうでないものはシングル構成にするなど分類した。可用性レベルは重要度に応じて「停止時間は○時間以内」、「故障時の性能劣化保証の度合い」など可用性目標などを細かく定めた。
実際に構築した社内システム共通基盤はパートナー製品とNTTグループサービスが混在している。ハイパーバイザーには「VMWare」、ブレードサーバーには「Cisco UCS」、ストレージには「EMC Cellera」、データセンターには「Green Data Center」、統合運用管理ツールは「Hinemos」、クラウドサービスには「BizXaaS」を採用した。
構築や運用面での工夫としていくつかヒントが挙げられた。ハードウェアは年々高性能化、低価格化が進んでいるので一気に購入せず「スモールスタート」がいいという。性能試験ではシステム間の競合を確認するため、全システムの性能/負荷試験を同時実施したという。負荷が高まるとストレージにボトルネックがくるため、可能ならメモリやSSDを確保することでストレージI/Oを減らすようにした。近年ではオンメモリやSSDの低価格化が進んでいるので、費用対効果が高くなっている。
実際に得られた効果はどうか。初期構築費用は現行比で約60%のコストダウン、TCO削減効果は5年間累計で50%削減、CO2削減効果は5年間累計で79%削減できると見込めるという。現場からすると、リソースを動的に割り当てられることでサーバーの空きを有効活用できる、ハードウェアとアプリケーションが一体化しなくなったためサポート期限切れにも柔軟に対応できるようになったという。運用やオペレーションが標準化できたため、管理要員の削減にもつながった。
最後に佐野氏は「単にサーバーを集約するだけではなく、業務レベルで重要度の見直しを実施し、全体最適化が図られるか精査することが大事」だと強調した。
※「BizXaaS」「Green Data Center」「Hinemos」は、日本国内およびその他の国における株式会社NTTデータの登録商標です。