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ステージゲート法による革新的な製品を生み出すイノベーションマネジメント

3ステップによる「革新的な製品」の創出、ゲートを活用した「戦略の確実な実行」

(第5回)


これまで4回の連載をしてきました。今回からは、ステージゲート法で何ができるのかを考えて見たいと思います。ステージゲート法はどのように生まれ進化していったかの背景、日本企業の失われた20年にとってステージゲート法がどのように役に立つのか、不確実性を前提として事業環境においてステージゲート法がどのように“使えるプロセス”なのか、などを「戦略と実行の整合性」の観点から解説します。(連載の記事まとめは、こちら)。

スターバックや金融機関も導入するテーマのマネジメント手法-進化の背景

 ステージゲート法は過去30年に渡り、世界中の数多くの企業で製品開発や技術開発のテーマをマネジメントする手法として利用され、その成功事例を反映し進化してきた手法です。

 ステージゲート法の原形は、NASAなどでも利用されてきたフェーズレビュー法です。このフェーズレビュー法は、開発プロセスを複数のフェーズに分割し、各フェーズを担当部門が責任を持って完了し、次の部門に受け渡すための手法です。各フェーズの終了時点でレビューをする場を設け、そこではもっぱら技術面を評価の対象とするものでした。

 ステージゲート法は1980年代中盤にカナダで開発された手法ですが、研究開発のプロセスを「ステージ(フェーズ)」「ゲート(レビュー)」に分割する構造は、フェーズレビュー法から受け継ぎましたが、ステージゲート法では、徹底して事業面での成功の視点からテーマを評価するという点が大きく異なっていました。

 その後、3M、P&G、コーニングといったイノベーションに優れた企業を含め、世界中の数多くの企業において、ステージゲート法の基本概念を使って各企業の事情に合わせ様々な試みが行なわれました。それらの試みと成果がフィードバックされることで、今で言うクラウドソーシングなどのオープン・イノベーションの開発法により、ステージゲート法は進化してきました。

 このような数多くの企業からの様々なフィードバックの結果、その利用目的は、当初の「テーマを管理する」という管理的な目的から、不確実性を前提にした革新的な製品を継続的に実現すること、また、事業戦略や技術戦略を実行するためのポートフォリオ・マネジメントの重要なツールとして機能すること、といったより「戦略的な目的」に変化をしてきています。

 現在ではステージゲート法は欧米企業で広く利用され、北米の製造業の7割がこの手法を使っていると言われています。また、利用の対象は製造業に限らず、スターバックスでの製品やサービスの開発、金融機関でのM&A案件のマネジメントなど、様々な業界で広く利用されています。

次のページ
製品開発における“失われた20年”で、日本企業が失敗した理由

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この記事の著者

浪江 一公(ナミエ カズキミ)

ベクター・コンサルティング株式会社 代表取締役社長大手電機メーカー勤務の後、アーサー・D・リトル(ジャパン)(株)、(株)フュージョンアンドイノベーション等を経て、現職。テクノロジーマネジメント、事業戦略、マーケティング戦略の分野で20年以上のコンサルティング経験を持つ。日本工業大学大学院技術経営研究科客員教授(兼任)。北海道大学工学部、米国コーネル大学経営学大学院(MBA)卒【主な著書・訳書】「ステージゲート法 製造業のためのイノベーションマネジメント」(英治出版)(訳...

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