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ステージゲート法による革新的な製品を生み出すイノベーションマネジメント

研究開発活動を“事業の成功”につなげる「最適ステージゲート・プロセス」

(第6回)

企業の研究開発活動は、通常さまざまな種類のテーマを対象とします。それぞれのテーマに対し、その分類ごとに異なったマネジメントが必要となります。今回の記事では、ステージゲート法におけるテーマの分類を説明し、それぞれのテーマ分類に応じた複数あるステージゲート・プロセスについて解説します。(いままで連載は、こちら)。

「テーマの分類」とマネジメントのポイント

 企業の研究開発活動は、通常さまざまな種類のテーマを対象とします。新規事業の創出を目的としたテーマもあれば、既存の事業を対象としたテーマもあります。また、既存の事業を対象としたテーマのなかにも、周辺の新たな製品分野の創出を目的としているテーマもあれば、既に展開している製品分野での新製品を目的としたテーマもあります。このようなさまざまなテーマを整理したのが図表1です。

図表1:ステージゲート法を設計するうえでの前提となるテーマ(対象)分類

 新規事業は、文字通りこれまで手掛けてきていない「新しい事業を創出すること」を目的とします。自動車メーカーであるホンダが、航空機事業に進出するような場合です。既存の事業では、新しい製品分野に出て行くためのテーマがあります。ここでは2つの展開の方向があり、一つは自動車メーカーが新しい技術であるモーターや電気制御の技術を使って、電気で走る同じ自動車(電気自動車)を展開するような例です。もう一つは、電気自動車メーカーが電気自動車以外に、電気自動車の充電設備を新たに手掛けるなどの周辺への展開の例があります。

 もちろん既存の事業では、既存の製品分野を対象としたテーマもあります。ここでは新製品のテーマの他、新しい技術、たとえば新しい排ガス規制対応の技術や新しいボディ溶接技術、そして既存の技術の改良などのテーマもあります。

 ステージゲート法に取り組む際に、このような「テーマによる分類」を行うのは、

  • 既に組織にあり共有されている市場の情報や経験の蓄積量、
  • 事業戦略のように既に決定済の事項、
  • 内在するリスクの大きさ

が大きく異なり、ステージゲート・プロセスでの活動やマネジメント方法が変わるからです。

 たとえば既存事業の既存製品分野であれば、すでに社内には豊富な情報があり、社内で多くの情報が共有されているはずです。ですので、あらたに調査したり、計画したりする活動は少なくて済むでしょう。このようなテーマ分類においては、ステージやゲートの数を減らすことができます。またゲートでの評価者であるゲートキーパーは、この事業に直接関与している人たちのみで良いでしょう。

 一方で新規事業の場合であれば、社内には関連する情報や知見は少ないので、既存事業より多くの活動が必要となり、また評価も多面的でなければなりません。ですので、ステージとゲートの数も増え、ゲートキーパーは広く内外の英知を集める必要も出てきます。

 ただし、図表1のような数多くの分類ごとにプロセスを用意して管理するのは大変ですので、ある程度グループ化できるものは、グループ化していきます。たとえば、「新規事業」と「既存事業の新製品分野」は、同じプロセスにする、などが考えられます。

次のページ
新規事業の創出を目的としたテーマは、「事業の成功」の視点でマネジメント

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この記事の著者

浪江 一公(ナミエ カズキミ)

ベクター・コンサルティング株式会社 代表取締役社長大手電機メーカー勤務の後、アーサー・D・リトル(ジャパン)(株)、(株)フュージョンアンドイノベーション等を経て、現職。テクノロジーマネジメント、事業戦略、マーケティング戦略の分野で20年以上のコンサルティング経験を持つ。日本工業大学大学院技術経営研究科客員教授(兼任)。北海道大学工学部、米国コーネル大学経営学大学院(MBA)卒【主な著書・訳書】「ステージゲート法 製造業のためのイノベーションマネジメント」(英治出版)(訳...

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