プロセスを目的化させないためには「3つのセット」が重要だ
プロセスを目的化させないためには、組織が目指すべき「目的・目標」と、それを阻害する「課題・問題」、そしてそれを解決するための「プロセス」がセットになっていなければなりません。新たな手法やプロセスの導入を決意した経営者やマネージャーは、恐らくこの3つをセットで考えていたのですが、チームが運用する段階になって、このセットがバラバラになり、結果としてプロセスだけが残ってしまったのです。
こうした事態が起きる理由は、主に3つあります。
- 新しいプロセスがチームに委ねられる際に、このセットがバラバラになってプロセスだけが手渡される
- 課題・問題を解決するためのより良いプロセスを選択する権利がチームに与えられていない
- 既存のプロセスを安易に導入しようとする
1のケースでは、どのようなプロセスを導入していくかを決めるのが経営者の役目で、メンバーはそれに従えばよい、という考え方から生まれます。しかし、プロセスの善し悪しが見えてくるのは、実はプロセスを動かし始めたあとから分かることがほとんどで、導入前にそれが最適な選択であるかを判断できることは稀なのです。本来はチームに対して組織が目指す目標と課題が手渡され、それを解決する最適なプロセスはチームが考えていくという設計が必要なのです。こうしないと、チームは必ず目標と課題をないがしろにして、プロセスの実行にだけ集中するようになります。
2は、目標と課題がチームメンバーに伝えられているにも関わらず、導入するプロセスは決められてしまっているとうケースです。1でお話ししたとおり、課題の解決にどのようなプロセスが効果的かは、実際の運用後に判明します。この段階でプロセスを設計する権限がチームにないと、いつまでのプロセスにこだわり続ける羽目になってしまうのです。インタビューという手法が上手くいかないと判断したら、インタビューで得ようとしていたフィードバックと同様の価値を得られる手段は、チームが主体となって考えるべきなのです。このように、インタビューにこだわり続ける理由はまったくありません。
3は本末転倒です。世間で評判の新薬が自分にも効果があると思ったら大間違いで、病気の症状はひとりひとり違うのだということを理解しなければなりません。特に新規事業という実に幅広い目的を実現するには、100チームあったら100通りのアプローチがあって当たり前なのです。毎日のように新たな手法がメディアで推奨されますが、こうした情報は「自分たちが新たにプロセスを設計する際の参考」として考えるべきで、安易に真似れば同じ効果が得られる手順だと思ってはいけません。合わないお薬は必ず副作用をもたらします。
小手先の手順を変えても組織は何も変わりません。必要な手順は課題を見据えて自ら作り出し、常に最適な選択をし続けることが大切なのです。
次回は思考を変えるために、「リーンな考え方」をどのように組織に取り込んでいくかについて解説します。