今年に入り「コンピューティングの第3の波」という表現を聞く機会が増えた。用語は多少異なるが、第1のメインフレーム、第2のクライアント・サーバーに続き、第3がクラウドというもの。例えばPivotalが日本法人を始動したときもクラウドを「第3のプラットフォーム」と呼んでいた。ユーザーの規模、アプリの規模が桁違いに増大する新しい世代。それを実践しているAmazonやSalesforceなど、クラウドをベースにビジネスを展開している企業が躍進しており、それを支える技術開発も活況だ。
Couchbase社もこの新しいプラットフォームへまい進している企業の1つ。同社はもともと2012年にApache CouchDBの開発を主導していた企業とMembaseの開発元が合併した企業。ドキュメント指向のNoSQL型データベース「Couchbase」を開発している。今後は非RDBが市場で伸びていくと見越してのことだ。
2012年12月にCouchbase Server 2.0がGA版として誕生した。ここが合併後Couchbaseの本格的な出発点とみていいだろう。その後着実に開発を進め、2013年9月13日にはCouchbase Server 2.2をリリースしたところである。
Couchbase Serverが掲げる特徴は4点。簡単に拡張できること、データモデルが柔軟であること、高い性能を維持できること、ダウンタイムがないことだ。拡張性に関してはMembase、データモデルに関してはドキュメント指向の側面をほうふつとさせる。これらCouchbaseが生まれながらにして持つ特徴に加えて、残り2つの高性能とダウンタイムなしに関しては企業で利用できるようにするために強化したところだろう。
拡張性についてはCouchbaseならではの強みとなっており、ビルトイン型のクラスタリングが実装されている。「クリック1つでノードを増やして拡張できる」とYaseen氏は言う。なお全てのノードは同等となっている。
高性能の実現には管理されたキャッシュが組み込まれているため。リードでもライトでも高性能を出せる。またオートフェイルオーバー機能を持つデータ複製、データセンター間の複製などによりダウンタイムをなくせるようにしている。
データベースとして見るとドキュメント型のデータモデルである。非構造型なのでデータ構造に柔軟性があり、JSONを使う。
いまCouchbaseが力を入れているのがモバイルへの展開だ。第3のプラットフォームではクラウドへはWi-Fiを使い、スマートフォンやタブレットなどPC以外の端末からのアクセスが増えてくる。モバイル端末でデータベースを利用できるように目指すのは自然でもあり、むしろ不可欠だ。
Couchbaseがモバイル戦略として掲げるのが「JSON Anywhere」。どこでもJSONが扱えるようにCouchbaseを展開すること。クラウドでCouchbase Serverが稼働し、それぞれの端末にも軽量のCouchbaseが稼働する。サーバーと端末の間にはCouchbase Sync Gatewayがデータの同期を取り持つ。データは一貫してJSONだ。
モバイル端末で稼働するのが「Couchbase Lite」。Couchbase 2.2リリースとほぼ同時にベータ版が発表された。現在ではiOSとAndroidのベータ版が公開されている。今後のCouchbaseで鍵となりそうな製品だ。
Yaseen氏はこう話す。「データをJSONにしたいならRDBは使えず、RDBにしたいならJSONが使えません。Couchbaseならサーバーと端末のどちらでもJSONが使えるデータベースです。これが新しいスタンダードです」
なお細かい話だがCouchbase 2.2ではプロトコルが変更になった。それまでは独自のプロトコルを使用していたが、2.2からはあらためてmemcachedになった。
今やアメリカではオンライン決済のPayPalや旅行のOrbitzほか、Couchbaseの利用事例が着々と増えているという。次期バージョンとなる2.3もそう遠くはなさそうだ。年明けには日本でイベントが開催される予定だそうだ。今後の盛り上がりに期待したい。