「組織パターン」の考え方やメソッドは、普通の会社組織に応用できる?
近年、「組織パターン」という考え方が注目されている。ソフトウェアのアジャイル開発で、よいアウトプットにはよい組織が必要という考えのもと、課題抽出から解決までの流れを再利用可能な「パターン」として捉え、組織づくりに活用していこうというものだ。アジャイルの世界で最重要人物のひとりとされるジェームス・コプリエン氏は、著書『組織パターン』のなかで組織の重要性に触れ、「ソフトウェア開発では技術的な側面にとらわれず、人間的な側面に目を向けよう」と主張している。
そう聞いて「ああ、ソフトウェア開発の話ね」と決めつけるのは早合点というもの。上の文の「ソフトウェアのアジャイル開発」の部分を「会社の事業」や「地域の活動」などに置き換えてみたらどうだろう。まま当てはまるのではないか。どんな製品やサービスも生み出すのは人であり、それも単なる集団ではなく、様々な役割や機能を分担する「組織」であることに違いない。「組織パターン」という考え方やメソッドが一般の組織改善、組織改革に使えると考えるのは自然だろう。
その仮説のもと、書籍『組織パターン』の版元である翔泳社が、自らの組織改革を目標に「組織パターン」の考え方やメソッドを取り入れた「未来会議」プロジェクトをスタートさせた。2014年にこれからの会社のビジョンや方向性を考える「未来会議Vol.01」を開催することを決定。今回は、その前段階として業務の棚卸しや問題抽出を今回の目的とした「未来会議Vol.00」と位置づけ、ワークショップを開催した。
開催日は12月第1週の金曜日。急なアナウンスだったにも関わらず、社員の約7割にあたる68名が参加した。参加できない社員からも事前に連絡があり、誰もが会の重要性を認識していることがうかがえる。
とはいえ、発起人や運営側はドキドキもの。12月といえば業界は繁忙期であり、出版社には「年末進行」という平時よりタイトなスケジュール管理が要求される。実際「こんな時期に」という不満も事前には聞かれていたという。しかし、業界が大きく変化し、その影響を少なからず受けつつある今、社長をはじめ多くの社員の「やろう!」の声に後押しされる形での開催となった。
「『ちょっとたいへんだけど、やる必要は感じていた』と言ってくれた人が多かったのはありがたかったです。実際、直前に出席できない人を中心に課題のヒアリングを行ったのですが、短時間ですごくたくさん出てきました。だから、もっとしっかり時間をかければ、問題の見える化と解決の糸口まで行けるものも、たくさんあるんじゃないかと期待しています」
そう語るのは発起人である取締役の岩切晃子。実際にコプリエン氏の『組織パターン』のワークショップに参加して、自らの課題や解決策を話し合い、大きな手応えを感じたという。そこで会社組織として取り組むための企画を策定し、社長をはじめ経営層に提案、開催へとつなげた。