今年1月に、米国ラスベガスで開かれた世界最大の家電市「2014コンシューマー・エレクトロニクス・ショー(CES)」では、多くのウェアラブル端末が出展された。メディアでは「ウェアラブル元年」と報道されるなど、新たな市場への期待が膨らんでいる一方、プライバシーに対する懸念も聞かれるようになった。今回は、ウェアラブル端末を例に、揺籃期(ようらんき)にある製品・サービスにおけるプライバシー保護のあり方について考える。
成長が期待されるウェアラブル市場
ウェアラブル端末とは、文字通り、顔や腕など身に着けることのできる端末の総称である。製品・サービスの開発競争が繰り広げられ、日々進化している最中であるため予断を許さない状況であるが、端末の種類で分類すると、(1)歩数や体温、睡眠状況など健康に関わるデータを収集するヘルスケア端末、(2)スマートウォッチと呼ばれる腕時計型の端末、(3)グーグルグラスに代表されるメガネ型端末の3つが代表的な市場であるとみられている。
野村総合研究所による市場予測*1では、上述の3つのウェアラブル端末の市場は、2013年度は合計で23万台であり、5年後の2018年度までに475万台まで成長すると推計されている(図1)。図中では分けて示されていないが、初期はヘルスケア端末が牽引し、その後、腕時計型の端末が成長し、メガネ型端末市場の立ち上がりは遅れるという予測である。
さて、本連載の主題である「プライバシー対策」の観点では、ヘルスケア端末は、個人の健康という比較的機微な情報を収集することに留意が必要であり、腕時計型の端末は、スマートフォンと同様の対応が求められると見込まれる。どちらも、現状取り組まれている対策の延長線上にあるといえる。ところが、メガネ型端末には、これまでの対策では収まりきらないプライバシー問題の存在が認識されており、新しいルールが必要な状況にある。
この記事は参考になりましたか?
- この記事の著者
-
小林 慎太郎(コバヤシ シンタロウ)
株式会社野村総合研究所 ICT・メディア産業コンサルティング部 兼 未来創発センター 上級コンサルタント専門はICT公共政策・経営。官公庁や情報・通信業界における調査・コンサル ティングに従事。情報流通が活発でありながら、みんなが安心して暮らせる社会にするための仕組みを探求している。著書に『パーソナルデータの教科書~個人情報保護からプライバシー保護へとルールが変わる~』(日経BP)がある。
※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です
この記事は参考になりましたか?
この記事をシェア