―2013年7月の買収後、組織や体制に変化はありましたか?
いまのところありません。なぜかというと、買収後も24か月から36か月間は、IBMはSoftLayerを完全にスタンドアローン(独立した組織)であるという方針をとっています。もっというと、SoftLayerがどのようにものを売るかということを見てから今後の展開を決めるということです。したがって、我々のものをIBMはすでにかなり売っていますが、今のところ内部的には何の変化もありません。
―IBMとSoftLayerとの間で移行の課題はありますか?
いまのところありません。SoftLayerに関しては移行が順調に進んでいます。また、買収が発表されたあと、2400の新しいお客様が私たちのところに来てくれましたが、これはすべて既存のIBMのお客様です。
―IBMと手を組んだ一番の理由は?
最初の5年間、2005年から2010年までSoftLayerのお客様はインターネットから生まれた人「Born on Web」といったタイプのお客様だったのです。それが2010年以降、大きく変わってきました。特に2010年以降、最初の24か月でお客様になってくださった50社以上の企業がフォーチュン500社に名前を連ねているエンタープライズのお客様だったのです。ところが、こうしたいいお客様がついても弊社の中には営業チームや営業エンジニアリング、ソリューションチームというのがありませんでした。なので、製品はすごくよかったのですが、それを管理してくれるスキルをもっている人、アカウント管理をしてくれる人がいなかったのです。では、どうするか。選択肢は2つしかなく、自分たちがゼロから作るか、すでにそういうノウハウを持っている企業に協力してもらうかです。つまり、IBMがこの領域に強いということが手を組んだ一番の理由です。
―IBMはSoftLayerを吸収して一気にクラウドに舵を切った印象があります。逆に、SoftLayerがIBMと組んで大きく変わった点はありますか?
これまでSoftLayerは、IaaSを可能にする“原料”を作りましょう、というように考えていました。SoftLayerのプラットフォームがIBMと一緒になったことによって、より大きなクラウドのポートフォリオができました。この中にはインフラもプラットフォームもSaaSも含まれていますから、次世代型の新しいものを作るということに関して、より完全なセットができたといってよいと思います。そして、この完全なセットによって新しく生まれるWebベースの会社であっても、あるいはずっと存在しているエンタープライズのお客様でクラウドにシフトしたいという方でもSoftLayerを使っていただけると思います。
―今回、IBM Power SystemsをSoftLayerのインフラ基盤として採用されましたが、これによって生まれる新しい顧客層をどうみていますか?
Powerのお客様としては3つの顧客タイプがあると思います。1つ目は、ビジネスインテリジェンスサービスで、WatsonをPowerの上に乗せてやるというお客様。2つ目は、既存のお客様でありながら、Power Systemsを自前でインストールするのではなく、レンタルしてPowerでクラウドをやるというお客様。3つ目はより優れたことをやりたいというエンタープライズのお客様がPower上で例えばDB2、BLU、Cognosをやるという、この3つではないかと予想します。
―IBMと組むことで、新しいリソースが入ってきました。SoftLayerは今後どこに向かうのでしょうか?
IBMにとっていま非常に大きな転換期に来ています。プラットフォームやSaaSだけではなく、企業全体をクラウドにしようというのがIBMのいまの方向性です。そして、ソリューションがこれからは全部クラウドの中にあるということになります。したがって、私たちがこれから出す製品はすべてクラウドの中にあります。お客様もクラウドベースで消費できます。世界中で40以上あるデータセンターで、こういうやり方をとっていきますから、お客様にいろいろな選択肢を与えることが可能になるのではないかと思います。
―SoftLayerにとって、競合はどこでしょうか?
アマゾンAWS、マイクロソフトAzure、そしてグーグルのインフラサービスの3社です。もちろん、もっと小さい会社も含めれば数多くありますが、私たちの考える世界的な規模で仕事をしていて、サイズ的にも同じということだとこの3社になると思います。
―そのなかで勝機は十分ありますか?
我々とこの3社とでは戦略が異なります。IBMはBtoBの企業です。売ったビジネスの先が最終的にコンシューマーに売るということです。さきほど名前をあげた3社は、かなりの量をコンシューマーに売っていますね。この3社は、非常にいい会社だと思いますが、我々とは戦略や方向性、そして製品もまったく違うものです。
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