…はい、今「組み込み」という文字を目にした途端、さっさとブラウザを閉じようとしたあなた。組み込みはお嫌いですか? 興味ないですか? そうですか。ではしょうがないですね……でも、ちょっと待った! たとえ組み込み開発に直接携わっていなくても、データベースに関わる方であれば、今回の内容は読んでおいて損はないと思うけどなー。何せ、組み込みデータベース製品の開発者の生の声が聞けるなんて、相当なレア体験。それに組み込みデータベースって、実は来るべきビッグデータ時代においては、かなり重要な鍵を握るコア技術なのです……。
実は隠れたベストセラーなんです「エンティア(Entier)」
ところで、「組み込み」って、何だかちょっと発音しにくいよね。試しに連続して口に出して言ってみると、「クミコミ、クミコミ、クミコミ……」。なんか、「ミ」が連続するところがまどろっこしいというか何というか。でも、試しにひっくり返してみると「ミコミク」、あら不思議! 何だか急に「萌え~」となるんだから、言葉って不思議だよねー。っていうか、そんなことマジでどうでもいいよねー。
さて、真面目な話はこれくらいにして。
組み込みソフトウェア開発の世界にも、リレーショナルデータベース製品が存在することをご存じだろうか? 組み込みといえば、とにかく「速く、軽く」というイメージが強いから、データベースにSQLを投げて云々かんぬんというのは、何だかちょっと「そぐわない」感じもする。実際のところ、組み込み用途に特化したデータベース製品というのは、世界的に見てもそう多くはない。
でもって、今回紹介する日立ソリューションズのエンティアは、その数少ないプレイヤーの中の1つというわけ。国産製品としては、事実上唯一の存在。知らなかったでしょ、ね? ね?(ドヤ顔)。え、知ってる?
今回登場していただくのは、このエンティアの生みの親、日立ソリューションズ 社会インフラ基盤本部 第4部 エンティアグループ グループマネージャの山崎典之さん。
「エンティアの製品構想を立ち上げたのが2004年4月のことでしたから、今年(2014年)はエンティアの誕生10周年なんですよ」
おー、節目の年ですね! ちなみにそもそも、なぜ10年前に組み込みデータベースなんていうマニアックなものを始めようと思ったんですか?
「もともとは、カーナビ向けのデータベース製品を開発しようというのが開発のきっかけだったんです。当時はちょうど、HDDナビが普及し始めた時期でしたから」
つまり、こういうことらしい。HDDナビでは、それまで主流だったDVDナビとは違い、地図データの書き換えが可能になった。これ、カーナビの世界では画期的な出来事だったんだけど、モノを作る側からしてみると、度重なるデータの書き換えにきちんと対応できなきゃいけなくなったということ。でも組み込みソフトウェアでのデータ管理って、データベースなんて使わないのが一般的で、とにかく処理時間を短く、そしてプログラムサイズを小さくするために、ファイルを直接読み書きする極力シンプルな機構が用いられてきた。
「でも、頻繁なデータ更新に対応するためにそういうプログラムを改修するとなると、データ管理部分が複雑になりすぎて、スパゲッティ状態になってしまいます。実際、ソフトウェアのデータ管理処理の不具合が原因での製品トラブルも少なくなかったようです。そこで、一般的なシステムと同様に、データ管理の処理をミドルウェア製品に一手に任せてしまえば、プログラムの開発生産性や品質は向上するし、開発者は本来の目的であるUIやロジックの開発に専念できるというわけです」
HDDナビが普及するに従い、こうした開発ニーズが増えてくるはずだと山崎さんは踏んだわけだ。そして実際のところ、その読みは大当たりして、エンティアは2005年12月の初代バージョンリリース以降、カーナビ分野での累計出荷本数は今に至るまで何と700万を数える! スゲー!
「でも、ニッチな市場ですからねえ……」
ちなみにカーナビ用途以外にも、家電や業務用端末なんかに組み込まれてるそう。