去る2014年2月24日、米国ラスベガスで開催されたカンファレンス「IBM Pulse 2014」。前日まで行われていたパートナー企業向けセッションに、CloudantのファウンダーでありCTOのアダム・ココロスキー氏はゲストの立場で参加していた。ところが翌日にはIBMがCloudantを買収すると発表。そこからはイベントのホストへと立場は一変することになった。買収したSoftLayerを中核にクラウドに注力するIBM。そして、新たに手に入れたクラウドサービスのCloudantを融合することでどんなメリットが生まれるのだろうか。
DBaaSは開発者が抱えるリスクを最小化する

CloudantはDBaaS(Database as a Service)を提供するクラウドベンダーだ。サービス化しているのは、リレーショナルデータベースではなくちょっと珍しいNoSQLデータベースだ。中でもJSON形式のデータを扱うドキュメント指向データベースをクラウドで提供している。Cloudantのサービスは、モバイルアプリケーションの開発者が利用しやすいものとして定評がある。
「アプリケーションの開発者は、データレイヤーの性能や拡張性の部分でリスクを抱えています。それを最低限にするのがDBaaSです」(ココロスキー氏)
ホスティングやIaaSでモバイルアプリケーションの開発環境を用意するのとは違い、DBaaSは開発者の「オファー(提案、要求)」そのものを提供する。なのでたんにクラウド上にNoSQLのデータベースを置くだけでなく、Cloudantでは独自のサービス・モニタリングの仕組みもしている。
サービスは、JSON形式のデータをHTTP(REST)を介して提供する。「Webアプリケーションやモバイルアプリケーションの開発者には親しみやすいものになっています」とココロスキー氏。Webサービスを必ず介すことになるモバイルアプリケーションなどでは、このWebサービスの形で利用できるCloudantは馴染みやすく使いやすいものだ。
可用性の高さもCloudantが評価されるポイントだ。データの移行性には注力しており、さまざまなIaaSの上でサービスを展開している。拠点を跨がるようなデータセンター間でのディザスタリカバリーも容易に行える設計となっている。「地域的に分散していても低遅延で運用できます」とココロスキー氏。また、モバイルアプリケーション、とくにゲームなどのサービスを提供する場合にはインフラのSLA(Service Level Agreement)も重要だ。
「ゲームの世界は諸刃の剣です。面白いゲームでユーザーが増えればデータレイヤーでものすごいトラヒックが発生します。そうなればゲームはダウンしてユーザーは離れてしまいます」(ココロスキー氏)
高可用性のサービスインフラでありSLAも十分に高くなければオンラインゲームのビジネスはうまくいかない。Cloudantのサービスを使えば、その環境が手に入るのもモバイルアプリケーション開発者から評価されるポイントだ。
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谷川 耕一(タニカワ コウイチ)
EnterpriseZine/DB Online チーフキュレーターかつてAI、エキスパートシステムが流行っていたころに、開発エンジニアとしてIT業界に。その後UNIXの専門雑誌の編集者を経て、外資系ソフトウェアベンダーの製品マーケティング、広告、広報などの業務を経験。現在はフリーランスのITジャーナリスト...
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