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「Oracle Zero Data Loss Recovery Appliance」は誰でもメリットをすぐに理解できるエンジニアードシステム


 Oracle OpenWorld 2014の一番の注目ポイントはクラウドだ。日本において杉原社長が就任会見で「2020年までに、クラウドと言えばOracleとなる」ことを日本法人の新たな目標に掲げた。これは日本独自戦略だったはずだが、新CEOのマーク・ハード氏も「#1 In The Cloud」ということを口にしており、Oracle Corporation本体もグローバルの戦略としてクラウドでNo1企業になることを目指すようだ。

OracleはグローバルでもクラウドでNo1企業を目指す

 というわけで今回は、クラウド関連の発表が目白押しだ。とくにプラットフォームのサービスには力を入れている。「Oracle Big Data Cloud」「Oracle Mobile Cloud」「Oracle Integration Cloud」「Oracle Process Cloud」「Oracle Node.js Cloud」「Oracle Java SE Cloud」という6つのクラウド・プラットフォーム、さらに「Oracle Database Cloud」「Oracle Database Backup Cloud」「Oracle Java Cloud」「Oracle Messaging Cloud」「Oracle Developer Cloud」「Oracle Business Intelligence Cloud」「Oracle Documents Cloud」という6つのクラウドサービスも新たに発表された。

 これらはPaaS関連のラインアップを一気に拡充し、強化するものと言えるだろう。SaaS関連もサービスは次々と増えており引き続きカバー領域を拡充し、前を行くセールスフォース・ドットコムを追いかけることになる。同時に、ライバルの少ないPaaS部分でのリードを確実に確保することを目指すようだ。PaaSの拡充は、結果的にはSaaSのプラットフォーム強化ということにもつながる。

 PaaSやSaaSのサービスの優位性にもなるプラットフォームの信頼性、高可用性、高性能。それを発揮するために活躍するのはコモディティサーバー群ではなく、Oracleのエンジニアード・システムだ。今回のOpenWorldでは高速分析専用マシンの「Oracle Exalytics In-Memory Machine X4-4」を新たに発表した。こちらは、Oracleのビジネス・アナリティクス用にカスタマイズされたIntel Xeon E7-8895 v2シリーズのプロセッサを4個搭載するもので、従来製品に比べクロック速度は50パーセント高速化し、処理能力も50%向上したプロセッシングコア、メモリ容量も50%拡大したものとなっている。

バックアップではデータをロスしてしまう

 そして今回発表したもう1つの新製品が「Oracle Zero Data Loss Recovery Appliance」だ。こちらは、昨年のOpenWorldで「Oracle Database Backup Logging Recovery Appliance」という長たらしい名前で発表したもののリニューアル版に位置づけられる。昨年もこのラリーが名付けた名前が「長い」と話題になったが、新しくなったこれもやっぱりかなり長い。この製品名もやはりCTOのラリーが名付けたそうで「サフラとマークの2人がCEOに昇格する前に私が決めてしまった」とのことだ。

 このアプライアンスは、いわゆるデータのバックアップをするためのものではない。バックアップの場合は「最後にバックアップした時点に戻すことができるものです。それは1時間前かもしれないし、1日前かもしれません。その間のデータは失ってしまう。バックアップソフトではOracleのログ情報であるREDOの整合性を保証しません。さらにバックアップをとるにはオーバーヘッドもあります」と言うのは、データベース ゼネラルセッションを行ったデータベースサーバー技術担当EVPのアンドリュー・メンデルソン氏だ。

メンデルソン氏
メンデルソン氏

 「Oracle Zero Data Loss Recovery Appliance」は、Oracle Databaseに特化したデータを守るためのアプライアンスだ。名前の通り、データロスがないのが売りだ。Oracle Databaseに特化したことで「REDOログも分かっています」とメンデルソン氏。たとえば1ヶ月単位で、すべてのデータをこのRecovery Applianceにデータをオフロードして保持しておくことができる。なので、1ヶ月の範囲であれば任意の時点までデータを戻して欲しいと言った要求にも柔軟に対応できる。

 通常のバックアップの場合には、バックアップを取得するのに本番環境のリソースを消費するためにバックアップ作業がオーバーヘッドになる。スタンドアローンのデータベース運用であれば、アプリケーションの負荷の小さなときにバックアップを取得するようスケジュールを設計すれば良い。しかし、複数のデータベースを統合しているような場合には、データの重要性もシステムごとに異なり、負荷をかけずにバックアップをいつどのような頻度で取得すれば良いかに管理者は頭を悩ませることになる。

 Recovery ApplianceではOracle Databaseに組み込まれたバックアップ・アルゴリズムを利用する。そのため、変更データのみをアプライアンスに送信するので、本番用データベースへの影響やI/Oトラフィック、およびネットワークへの負荷を最小化できる。結果的に高いリソースコストとなるバックアップ処理は、すべてアプライアンスへオフロードすることが可能となる。

 この仕組みは、日常的にOracle Databaseの管理をしている人にとっては極めて理解しやすいものだろう。Oracle Exadataと連携して使う場合には高速なインフィニバンドも利用できるので、ネットワーク遅延の心配もなくなり「データロスがない」ということにもかなり真実みが出てくる。

 Recovery Applianceは最新のOracle Database 12cだけでなく10g、11gでも使える。「どれを使ってもデータロスはなくなる。人が間違え犯しても大丈夫だ。これは誰でもすぐにメリットが分かるものだ。いますぐに買ってくれるなら10%割引する」と初日のキーノートセッションでラリーは聴衆に約束した。2日目のキーノート・セッションでは、新CEOとなったマーク・ハード氏が、ラリーの割引率にさらに5%上乗せすると発言した。これは些細なことだが、新CEOとしての権限を誇示して見せたことになるのか。ちなみに、このRecovery Applianceの機能も、クラウドでの提供予定があるという。

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この記事の著者

谷川 耕一(タニカワ コウイチ)

EnterpriseZine/DB Online チーフキュレーターかつてAI、エキスパートシステムが流行っていたころに、開発エンジニアとしてIT業界に。その後UNIXの専門雑誌の編集者を経て、外資系ソフトウェアベンダーの製品マーケティング、広告、広報などの業務を経験。現在はフリーランスのITジャーナリスト...

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