IoTソリューションを開発している企業として紹介された国内パートナーは、日立ハイテクノロジーズ、三菱電機、オムロン、若松通商の4社。Azureのクラウド基盤やAzure Machine Learningサービスを活用することで、これまで実現が難しかった、大量のデータをリアルタイムに分析して、機器や設備の故障、異常を予兆するサービスなどを展開するという。
日立ハイテクノロジーズでは、医療機器や産業機器の稼働データを分析する独自の予兆診断アプリケーション「BD-CUBE」をAzure上に構築し、故障や誤動作の兆候を予測して機器の安定稼働を支援するサービスを提供する。異常予兆を的確に検知し、多角的にわかりやすく表示することが特徴という。
三菱電機は、工場内のFA機器をモニタリングし、生産現場の見える化を支援する統合ソリューション「e-F@ctory」をAzureに接続できるサービスを提供する。シーケンサなどのFA機器のほか、e-F@ctory Allianceパートナーがアプリケーションサービスを提供する。オムロンも同様で、PLCなどのFA機器「Sysmac」をAzureに接続し、クラウドへのソリューションを展開する。生産見える化、設備予兆、工場と他組織連携強化といった「日本版製造IoTサービス」を推進するとしている。
若松通商は、IoTサービスに関する技術開発を支援するために、学習用のセンサ付きボード「Internet of Things Starter Kit(仮称)」を11月に発売する。Azureと連携し、クラウド上に開発環境を構築できるほか、学習用コンテンツも提供する予定だ。
説明会には米Microsoftからコーポレートバイスプレジデント沼本健氏の来日。マイクロソフトが考えるIoTについて、「IoTは、既存の基盤や既存のデバイス、既存のデータといった、既存のIT資産、すなわちYour Thingsを活用することから始まる」と説明した。
沼本氏は、IoTについて、意思決定のスピードアップや競争力強化、新しい事業機会の創出、顧客サービスの再定義といった点で、ビジネスに欠かせないものになったきたと主張。そのうえで、IoTを実現するために必要となるシステム的な要素としては、「包括的なクラウド」「拡張可能なネットワークとゲートウェイ」「多種多様なデバイスに対するサポート」「業務システムの監視・監視」「実行につながるデータ解析」の5つを挙げた。
説明会では、それらを具体的に実現したシステムとして、竹中工務店が提供を予定している「次世代建物管理システム」を紹介した。竹中工務店の情報エンジニアリング本部長、後神洋介氏によると、同システムは、Azureと高中工務店のビル管理システム「ビルコミュニケーションシステム」を連動させ、建物の設備運用を最適化することで、サービスレベルの向上と入居者の満足度の向上を実現するシステムだ。
「竹中工務店東京本店で実証実験を進め、2015年以降、ビルオーナー向けに提供していく。具体的には、集積したデータをAzure Machine Learningで学習して、制御モデルを構築し、そのモデルを使った熱源、動力の効率的な制御を行って、設備の管理負荷低減と快適性の向上を目指す。Azureの自動スケーリング機能を使うことで、デバイスやセンサからのデータの急激な増減などに対応していく」(後神氏)という。
発表会では、Azure Machine Learningのデモも披露した。デモは、センサデバイスから受け取ったデータをリアルタイムに処理して、予測モデルを構築し、そのモデルを使って、デバイスの異常を検知するというもの。デバイスはおもちゃの自動車で、そこに取り付けられたセンサで車体の揺れを計測。そのデータをAzure上のデータベースに格納してモデルを構築し、Web APIを使って、PCやスマートフォンなどに異常を通知してみせた。
デモを行ったクラウドアプリケーションビジネス部 部長の斎藤泰行氏によると、ポイントは、デバイスの開発環境としてVisual Studioを流用できること、モデル構築にデータサイエンスなどの高度な専門知識が必要ないこと、Web APIを利用することで、IoTデバイス、モバイル、クラウドの連携が簡単にできることだという。
沼本氏は最後に、今年2月から国内にデータセンターが開設されたこともあり、Azureが年間198%成長をとげていると紹介した。