受け身のシステム運用が苦しみを生む
システム運用と聞いて、あなたは何を思い浮かべますか?
- データセンターの一室に押し込められて、ひたすら端末と向かい合っているオペレータ
- ユーザからの苦情や問い合わせに日々追われ、本来の作業ができていない運用管理者
- 根本解決できるリソースも予算もなく、暫定対応を余儀なくされているシステム管理者
想像するだけでもゾッとする状況ですが、そのような状況に陥っているシステム運用組織は、実際に数多く存在しています。そして、日々の業務が受け身であるために対応が後手に周り、結果としてシステム運用に携わる人の多くは、とてもネガティブな環境で仕事に取り組むことを強いられています。
例えば、ある製造企業のシステム運用の現場では、業務部門から毎日100件を越える作業依頼が寄せられており、その異様な状態が定常運用として当たり前になっていました。
また、別の通信企業では、業務部門では戦力にならなかった人材の受け皿として情報システム部門が存在しており、そもそもの力関係として、受け身のシステム運用(リアクティブ・サポート)を要求されているケースもありました。
ネガティブなレッテルに悩むシステム運用組織
なぜシステム運用は、かくも厳しい状況に立たされているのでしょう。それはシステム運用を行う組織の位置づけを考えると分かるかも知れません。
システム運用は一般的に情報システム部の管轄になりますが、多くの組織でこの部署は「コストセンター」として認識されています。コストセンターとは、支出に関する機能を集約して効率化を目指す組織であり、それゆえ、多くの経営層にとってはコスト削減の対象に過ぎません。言い換えれば、「利益をもたらしている組織ではない」と見なされているのです。
さらに悪いことに、情報システム部の多くは、費用実績に関する説明責任を果たしていません。
ここで述べている説明責任とは、システム運用全体で何人月の工数が発生したのかというレベルよりももっと細分化した項目についてです。「Aシステムの作業依頼対応で8時間」、「Bシステムの報告書作成で4時間」というように、システムと作業内容のレベルで工数や費用の積み上げを行っているか、ということです。
これらの情報がデータとして蓄積され、分析や報告が可能な状態に整理されていない限り、経営層からシステム運用に対する不透明感を拭い去ることはできません。
そして、そのような不透明な運営を行う組織に対するコスト削減がどのようになされるかと言えば、「よく分からないから一律5%削減としよう」という根拠とも呼べぬ理由で目標が決められてしまうのです。
そうです。世の中のシステム運用に携わる組織というのは、
- 利益をもたらしていない
- 費用対効果が不明瞭
というネガティブな二大レッテルを貼られ、その中での活動を余儀なくされているのです。