技術を知る人材が”ビジネスを大きく変えるような提案”をしてくれないだろうか?
どんなに技術が発展しても、むしろ技術が発展しているからこそ、技術を使いこなし、ビジネスに生かせるかどうかは人間の発想力や行動力が鍵となる。
今、テクノロジーに関わる部門、主にIT部門にはどのような人材が求められているだろうか。「テクノロジー以外のスキルや能力の獲得も強く求められるなど多様化が進んでいます」とガートナー リサーチ リサーチ ディレクター 長嶋 裕里香氏は多様化を指摘する。
背景には技術が発展かつ普及し、技術がビジネスに大きく関与するようになってきたことが挙げられる。長嶋氏は建設機械メーカーであるコマツの建設現場ICTソリューション「スマートコンストラクション」を例に説明した。このソリューションではドローンで空から測量し、地形データが早く安価に作成することを実現した。これまで自社で調達できなかった測量データをドローンと情報処理技術により自社で作成可能としたことは、ビジネスを大きく変えるインパクトがある。
「いまテクノロジを使いこなし、新たなビジネスを生み出す人材が求められています」と長嶋氏。言い換えると「技術を知る人材がビジネスを大きく変えるような提案をしてくれないだろうか」そんな期待があるということだ。
しかし期待と実情にはギャップがある。ガートナーが2015年に調査したところ、「技術の変化に対応できるようなトレーニングが整備されていない」、「ITインフラ担当者は日常的な雑務に追われている」という設問に対し、どちらも半数以上の「あてはまる」との回答を得た。現場では半数以上が「技術の変化についていける状況にはない」と不安視している。この問題について長嶋氏は「個人の努力のみでは解決できない可能性が高いです」と指摘し、組織としての戦略的な取り組みの必要性を強調した。
IT部門が技術についていけなくなるとどうなるか。日々自社のシステムのお守りをしているだけではコストセンター(費用を消費するだけの部署)となり、不要な存在となりかねない。社内システムが外部のクラウドサービスなどに取って代わられる可能性もある。しかし技術を知る立場だからこそ、技術を用いて新しいサービスを提案し、提供するような存在となれば「イノベーターになれます」と長嶋氏は言う。