クラウドでもエンタープライズ・レベルの信頼性が必要とされる
ビジネス現場のさまざまなシーンでデータを使った判断を行いたい。しかしながら、オンプレミスのBI環境では、欲しいデータを追加、変更するにはIT部門に依頼しなければならない。これでは時間がかかり、タイムリーなビジネスの判断は行えない。
ビジネス環境の変化が激しい中では「ビジネスユーザー自身がデータを集め、アジャイルに活用できることが重要です」と五十嵐氏。こういったBIへの新たなニーズに呼応するように、クラウドでBI環境を提供する新興のサービスが各種登場している。それらがクラウド型BIツールの普及を加速しているのは間違いないだろう。
クラウド型のBIツールを利用すれば、ビジネスユーザーでも容易にデータ活用を始められる。データの追加や変更なども、ビジネスユーザー自らが行えるよう工夫しているツールは多い。とはいえ、クラウド上のBIツールの活用は企業の特定部署によるシャドーIT的な利用や、業務の一部領域を対象にしたパイロット・プロジェクトにとどまる例が多い。このように一部だけの利用になってしまうのは、新興のクラウドBIツールがエンタープライズ向けになっていないからだと五十嵐氏は言う。
「クラウドBIを活用する際のポイントは、エンタープライズ・レベルの信頼性と安定性です。その上でクラウドのスピード感があることが重要なのです」(五十嵐氏)
全社展開が可能でエンタープライズな利用にも耐えうるBI環境。それがクラウドで提供されているので、部門の費用負担などでスモールスタートも可能。Oracle Business Intelligence Cloud Service(以下BI Cloud)と新興の「クラウドだけのBIツール」との差がここにあると五十嵐氏は指摘する。このBI Cloudの基盤となっているのはOracle Database Cloudだ。つまり、オンプレミスのエンタープライズ用途の世界で圧倒的な実績を誇るOracle Databaseであり、その信頼できるプラットフォームの上で展開しているBIサービスがBI Cloudなのだ。
Oracle Databaseを活用していることは、IT部門にもメリットをもたらす
「IT部門がビジネスユーザーの要望を聞き、いちいち下準備する必要がないので管理の手間は削減されます。しかしクラウドとはいえ、全社規模での導入となれば運用、管理面では何らかの作業も発生します。その際にもこれまで利用してきたOracle Databaseのスキルで対応できるので、IT部門は安心です」(五十嵐氏)
BI Cloudについては、エンドユーザーとなるビジネスユーザーとIT部門が合意した形での採用が6割程度あるとのこと。「ビジネスユーザーだけの判断で導入すると、どうしてもシャドーIT的となりその後の広がりがありません。IT部門と一緒に合意していれば、企業のITの仕組みとして納得して導入してもらえます」と五十嵐氏。BI Cloudはビジネスユーザーだけでももちろん活用できるが、それだとデータの取り扱いのところでガバナンスが効かなくなる可能性もある。
「データベースも含めOracleの技術でクラウドに行ける。このことはIT部門も安心できるポイントです」(五十嵐氏)
データを自動判別し最適な方法をツールが選択
オンプレミスのデータ活用環境であれば、データウェアハウスなりに必要なデータをロードしデータマートなどを作ってエンドユーザーに提供する。クラウドの場合には、あらかじめIT部門がロードして用意するデータもあれば、エンドユーザーが手元にあるデータを自ら追加し利用する場合もある。BI Cloudでは、データをクラウドに上げるためのさまざまな方法を用意している。「BIの画面からエンドユーザーが簡単に手元のExcelファイルを追加できる機能などが用意されています」と五十嵐氏。このあたりの機能は、クラウドになってからより進化したものだとのこと。
何らかのビジネス施策を行い、そこから得られたデータを追加し何が起こったかをすぐに知りたい。それを容易に実現するのが、Visual Analyzerと呼ばれる機能だ。これはデータから探索、発見するためのもので、この機能を使ってデータをどのように見ればいいかが分かれば、ダッシュボードのようなものを作りマネージメント層などに提供する。
今回、BI CloudではこのVisual Analyzer機能が強化された。その1つがクラウド上にロードされたデータから、分析したい項目を選択すると、選ばれたデータを自動的に判別し最適な表現で自動表示する機能だ。たとえば、売上金額、売上数量、値引率、販売した地域という4項目を選ぶと、3つの数値データと1つの地域だと判断し、最適な散布図が自動的に表示される。散布図を見てさらに男女別の購買情報を加えるといったことも、ドラッグ&ドロップの操作で簡単に行え、分析者の思考を妨げずに素早く情報探査が可能となる。
「グラフを変更したり、手元にあるデータをすぐに追加したりといったことが簡単にできます」(五十嵐氏)
たとえば手元にあるExcelデータを追加する場合にも、列名が同じであればデータを自動的に結合するので追加した情報がすぐに画面に反映できるのだ。ユーザーが追加したデータをどういったユーザーと共有するのかと言ったこともきめ細かく設定可能だ。
さらに、もう1つ力を入れているのが地図表現だ。
「BI Cloudには地図情報を内包しているので、地図情報付きのデータを地図上に張り付ける事ができます。日本を選択して地名を選択すれば地図上に地域別の売り上げデータなどを簡単に表示できます」(五十嵐氏)
「BIと地図機能をユーザーがインテグレーションする必要はありません」と五十嵐氏、これらの機能は標準で搭載されており、追加料金なしで利用可能だ。
オンプレミスのツールで新機能を使おうとすれば、バージョンアップしたり機能を追加でインストールしたりといった手間が発生する。クラウドならば新機能は自動的に追加されすぐに利用可能だ。Oracleでは、先進的な機能をオンプレミスよりはむしろクラウドに先行して適用する傾向も出てきているとのことだ。
きっかけはシャドーIT的でも選ぶべきは堅牢性のあるクラウドサービスを
前述のように、BI Cloudにはクラウド上にデータを上げる機能を多数用意している。これにより信頼性の高いデータ活用環境を、IT部門がガバナンスを効かせた形で用意できる。「Oracle Databaseが持っている機能は、そのままクラウドでも使えると思っていいでしょう。オンプレミスでできることは、ほぼそのままクラウドでも実現できます」と五十嵐氏。そのためかなり細かいレベルでのアクセスコントロールも可能だ。これは、クラウドBIを全社展開をする際には必須の機能となる。
「クラウドだけのBIツールの多くは、そのツールの中だけで有効なアクセスコントロール機能は持っています。これだけではさまざまな部門からのガバナンスの効いた形での利用や、細かいレベルでの権限管理などがうまくいかないこともあります」(五十嵐氏)
できないので特定部署による特定データの分析止まりとなってしまう。企業の重要なデータも分析して活用するとなれば、これまでオンプレミスで実施してきた高度できめ細かいデータ管理がクラウドでも必要となるのだ。
もう1つOracle Cloudならではの特長がある。「Oracle Cloud Platform(PaaS)全体で言えることですが、Oracleは可搬性を大事にしています。これはクラウドとオンプレミスのいいとこどりをするようなものです」と五十嵐氏。クラウドとオンプレミスで同じテクノロジースタックが使われているので、例えば、既にお客様がオンプレミス上で構築しているBIシステムを新しいテクノロジーを享受する為にクラウド環境にデータモデルを移行する事が可能だ。また、プロトタイプ開発をクラウド上で速やかに行い、オンプレミスの本番環境に移行するといった事も今後、容易に行われるようになっていくだろう。
「Oracleのサービスは、クラウドに囲い込むものとは違います」(五十嵐氏)
保守的だと思われている金融機関などでも、プロトタイプ開発とテストは迅速性を確保できるクラウドで行う動きも出ている。実際の運用はプライベートクラウドやオンプレミスなど信頼性の高い環境で運用するとしても、クラウドでもオンプレミスでも稼働環境を選ばない。今後これは、大きな価値となると五十嵐氏は指摘する。
「クラウドなので速く簡単に使える、これはどのベンダーでも主張しています。その上で、エンタープライズで利用できるセキュリティ性と信頼性があるのか。Oracle Databaseは、エンタープライズ・レベルの高いセキュリティ機能をもっています。オラクルのBI CloudはこのOracle Databaseに格納されたデータを活用します。」(五十嵐氏)
部門で試しに使うのだから多少セキュリティが甘くてもいいということは絶対にない。とくに、個人情報など企業の重要情報に少しでも関わるのであれば、当初から堅牢な仕組みが必要だ。なのできっかけはビジネスユーザーによるシャドーIT的なものであっても、選択すべきは信頼性の高いクラウドサービスを選ぶべきだと五十嵐氏は強く主張する。