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ビジュアルコミュニケーション・ツールのV-CUBEは、自分たちの「困った」を解決するために生まれた


 テレワークやリモートワークなど、新たなワークスタイルが普及してきた。その背景には、遠隔地とのテレビ会議などを実現するビジュアル・コミュニケーション技術の進化があるだろう。そんなビジュアル・コミュニケーションのマーケットリーダー的な立場にあるのがブイキューブだ。

テレビ会議システムは高くて使いにくい、だったら自分たちで作ってしまえ

 ブイキューブは創業当初の18年ほど前は、ITシステムの受託開発を行う会社だった。2003年に米国へ進出しオフィスを設置したが、「その際に日本とのコミュニケーションに困って作ったのがV-CUBEです」とブイキューブ 代表取締役社長 CEOの間下直晃氏は述べる。

 当時のテレビ会議システムは専用ハードウェアを設置するもので、かなり高価だった。操作も複雑で使いやすいとは言いにくい。それをなんとかしたいと作ったのが、ソフトウェアベースのWeb会議システム「V-CUBE」だった。現在はこのWeb会議の仕組みをクラウドサービスとしても提供している。

ブイキューブ 代表取締役社長 CEOの間下直晃氏
ブイキューブ 代表取締役社長 CEOの間下 直晃氏

 最初は自分たちの「困った」を解決するための道具であり、それを製品化し受託開発から転換、ビジネスを拡大している。V-CUBEを生み出した当初から、自分たちの製品を表す言葉として「ビジュアルコミュニケーション」を使ってきた。当時はそんな言葉を他のベンダーは誰も使っていなかったと間下氏は言う。

 そんな同社がビジネスを伸ばすきっかけとなったのが、2009年のリーマンショックだ。このときには出張経費削減などの動きがあり、一気に問い合わせが増える。その後も残念ながら世界中でテロや災害が起こり、エボラ出血熱や鳥インフルエンザなども発生する。これら「社会的に負の現象」が、ビジュアルコミュニケーションを注目させることとなるのだ。

 後ろ向きなきっかけでもあり、企業としては高価なハードウェアを購入するよりも、クラウドの利用でなるべく資産とならないようにしたい。そういった意向もあってか、ハードウェアを必要としないV-CUBEは受けていると間下氏は語る。

 「2009年くらいまではオンプレミス型が主流でした。その頃までは、テレアポでこちらから売り込まないとなかなか売れませんでした。それが2009年以降はマーケットががらりと変わって、テレワークが注目を集めます。引き合いも増え、テレアポでの営業は必要なくなりました」(間下氏)

 現在は、オンプレミス型よりもクラウド型の割合がかなり大きくなっている。そんな中、ブイキューブでは新たにアプライアンス型の製品「V-CUBE Box」の提供を開始した。これは、ハードウェア型のWeb会議システムだ。かつて市場では高価で使いにくかったハードウェア型システムを、あえて出したのには訳がある。

 「リモコン使って簡単に操作したいという、テレビ型へのニーズがユーザーにはあるのです」と間下氏。さらに「箱」があると代理店となるパートナー企業も扱いやすいメリットもある。もちろん高くて使いにくいハードウェア型の短所は踏襲せず、汎用の小型PCを利用してコストを下げリモコンもかなりシンプルなものを用意した。このアプライアンス型の製品は、ソフトウェア版のV-CUBEとも接続が可能だ。

 Web会議のシステムとして始まったV-CUBEは、2014年8月からは「V-CUBE ONE」というSuite型の統合製品に移行している。その中の「ミーティング」が従来のWeb会議の機能だ。他にもV-CUBE ONEには「ドキュメント」「セミナー」「セールス & サポート」「ポータル」、法人向けチャットサービスの「V-CUBE Gate」といった機能が用意されている。

 「企業内のコミュニケーションすべてをサポートしています。他社の多くがミーティング機能だけなので、ここまで揃えている競合は他にはありません」(間下氏)

規制緩和とビジュアルコミュニケーションで業務のやり方自体が進化する

 同社がさらに力を入れているのが、教育、医療、ロボティクス、金融といった新たな領域でのビジュアルコミュニケーションの活用だ。これは社会インフラに含まれるようなもので、汎用的なビジネスで利用されるビジュアルコミュニケーションとは少し趣が異なる。

 「一般の人たちがコミュニケーションのツールとして使うものです」(間下氏)

 教育はイメージしやすいだろう。たとえばフィリピンなどの遠隔地にいる英語教師から英会話を教わるといったことはすでに始まっている。さらには高校などの学校教育現場でも、規制緩和がなされリモートにいる教師からも授業を受けることができるようになった。これは、以前は教室に教師がいなければ正式な授業として認められなかったものが規制緩和により可能となったのだ。「ここでもV-CUBEの仕組みが使われます」と間下氏。

 この規制緩和は小中学校にも拡大する。今後、リモートにいる教師による授業が拡大することは間違いない。「学校は減らせないけれど、各地で生徒の数は減っています。生徒が減るとその学校の教師の数も減らさざる得ません。そこを補完するのがビジュアルコミュニケーションです」(間下氏)

 遠隔医療についても規制緩和があり、初診の段階から遠隔での診察が認められるようになった。「これは病院のオペレーションコストを下げます」と間下氏は述べる。当然ながら、遠隔医療を有効に活用できれば、医師不足対策や医療費全体の削減にも寄与する。他にも処方箋薬の提供は、薬剤師がその場にいなくてもリモート対応できるようになった。ここでもビジュアルコミュニケーションが必要とされる。

 金融領域で分かりやすい例は、不動産取引の際の重要事項説明がある。これまでは面前で説明する必要があった。たとえば引っ越す際には、部屋を探すときと契約するときの2回、不動産取引の会社を訪れなければならなかった。これが部屋を探すときだけでよくなり、契約時はリモートでも可能となったのだ。

 もう1つのロボットは、流行のドローンを活用するソリューションだ。

 「ブイキューブ ロボティクス・ジャパンを2015年に創業し、Web会議のインターフェイスを使い見たいところの様子が見られるようにします。Web会議を行うのと同じ操作でドローンを操ることができます。これには、たとえば大きな工場の監視などの用途が考えられます。このドローンとビジュアルコミュニケーションを組み合わせたソリューションは、市区町村などの自治体も興味を持っており、各地で実証実験を始めているところです」(間下氏)

 ドローンは飛行制限などの規制があるが、自治体が行う災害対策業務などであれば飛行は許可されるだろうとのこと。この新しい領域については、間下氏は大きな期待を持っている。これらのように規制緩和とビジュアルコミュニケーションを組み合わせれば、新たな効率的なビジネスのやり方が生まれることになる。

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この記事の著者

谷川 耕一(タニカワ コウイチ)

EnterpriseZine/DB Online チーフキュレーターかつてAI、エキスパートシステムが流行っていたころに、開発エンジニアとしてIT業界に。その後UNIXの専門雑誌の編集者を経て、外資系ソフトウェアベンダーの製品マーケティング、広告、広報などの業務を経験。現在はフリーランスのITジャーナリスト...

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