大学を辞め勉強をやり直し、IT分野への新たな挑戦
伊藤さんはカードゲームのショップでアルバイトもしていた。そこで販売店のシステムに触ることになり、それがIT業界に入るきっかけとなった。
「やっていたのは、Microsoft Excelで在庫管理の仕組みを作るとかです。在庫が多く棚卸しが大変だったので、それをスムースにできるようシステムを工夫していました」(伊藤さん)
PC9800シリーズなどのコンピュータは小学生の頃から触っており、もともとプログラムを作ることは好きだった。一方でこの頃、大学の勉強のほうは少し挫折気味だったとか。
「数学や統計解析などが必要で勉強したのですが、どうしても追いつけない。このままやっていけるかなぁと不安がありました」(伊藤さん)
アルバイト先で触っているシステムはうまく扱えて面白い。そこで「情報系で活路を見出したほうがいいのでは」と思うようになった。そう考え出した結論が、大学も辞めカードゲームのプロも辞め、コンピュータの勉強を新たに始めることだった。大学を中退しコンピュータ総合学園HALのマルチメディア学科に入学した。ここでソフトウェア開発技術者に必要なプログラミングはもちろんネットワークのスキル、さらにはプレゼンテーションやプロジェクトマネージャに必要なことまで学ぶことになる。
HAL時代には、インターンとして印刷の会社で働いた。ここで社内コミュニケーションを実現するシステムを作るプロジェクトに参加した。その際、既存のソフトウェアを調べるとサイボウズに便利そうなものがあることを見つける。そんな経験を元に就職活動を行い、インターンをした会社とサイボウズから内定をもらった。中から選んだのがサイボウズで新卒3期生となる。
入社した当時、開発よりは情報システム部門で仕事がしたかった。当時の上司からもプログラマーはあまり向いていないと言われる。配属されたのは、新たに立ち上がった品質保証部だった。ちょうど、サイボウズの中で製品の品質向上の動きが本格化した頃だった。配属され最初に行ったのが、ある製品のセキュリティ問題の調査だった。これがセキュリティの世界に入る伊藤さんのきっかけだ。
当時、米国から撤退したグループウエア「Share360」という製品があった。これを開発していたサーバーがいくつかあり、まずはその中からソースコードを洗い出し新たにビルド環境を作るところから作業は始まった。この製品は英語だけでなくさまざまな国の言語が利用できた。
「タイ語の試験仕様書などを見ながら、テストをしていたことを憶えています。仕様書がない機能などもあり、自分自身のテストのスキルもまだ十分ではありませんでした」と振り返る。
Share 360 は、脆弱性が修正されて世の中にリリースされたが、その次に担当した Cybozu Messengerは、残念ながらリリースされなかった。
その後で脆弱性診断をずっとやる生活になったという。しかし、この仕事で製品品質やセキュリティ性の向上に関しさまざまなことを学ぶことになる。次に伊藤さんが関わるのがガルーンのすべての機能についてセキュリティ診断をするものだった。4ヶ月間ひたすら機能のテストをする毎日である。さらに、この作業から派生しガルーンと一緒に利用するドットセールスについても同様のセキュリティ診断をすることになる。その後ガルーン製品の品質保証責任者という役割を担い、オフショア開発のマネージメントもやるようになった。