ハードウェアベースのインフラが提供する商用サービス
従来の未仮想インフラによる商用サービスのサービススペックは、ハードウェアの仕様をベースに提供されていました。ストレージ系サービスのサービススペックで例を挙げると、データ保障、メンテナンス、容量、サービス規模、価格などがあります。
また、ハードウェアのリプレイスにあわせて機種が変更され、サービススペックが変わる場合もありました。つまり、サービスの提供期間がハードウェアのライフサイクルに縛られてしまう可能性があったのです。
その他にも、サービスレベルと比例して初期投資が比較的大きなものになり、サービスの需要予測と稼働率・投資リスクとのバランスなどを考慮すると、回収(ビジネス)モデルが立てづらいという側面もありました。サービス要件とハードウェアが一体となっていたため、サービススペックを上げたり、サービス規模を大きくしたりするほど、高価なハードウェアが必要になっていたのです。
結局、仮想化前のインフラ系サービスの多くは、ハードウェアに依存したサービスのため、「初期投資とリスクが大きい」「回収(ビジネス)モデルが立てづらい」「長期間にわたって安定したサービスの提供が難しい」などの問題を抱えていました。
仮想インフラによる商用サービス
近年大きな注目を集めているインフラ仮想化の技術は、インフラ系商用サービスのあり方を大きく変える事になりました。前文でも述べたように、未仮想のインフラサービスは、ハードウェアのスペックにサービスレベルが影響を受けるため、ハードウェアに合わせてサービスレベルを設計しなければならないという側面があります。
一方、仮想化されたインフラはリソースをプールし、自由に必要なだけ使える環境を実現しました。仮想化によってもたらされるリソースの統合や共有は、同一インフラ内で複数のサービスレベルの提供を可能にし、初期投資の抑制、サービス規模に応じた投資の最適化、投資リスクの低減などを容易にしました。
また、仮想化によってもたらされるサービスやインフラの継続性は、同一レベルのサービス提供を長期間行うこと可能にし、さらにはサービスレベルの変更も容易に行えるようにしました。
つまりインフラサービスは、仮想化技術によって初めて、サービスレベルの設計に合わせたハードウェアの選定を行えるようになり、必要なリソースを必要な時に必要なだけ提供する、リソースオンデマンドという理想の姿を手に入れたのです。