PostgreSQLをエンタープライズで使えるよう拡張
EDBは本社をボストンに置き、PostgreSQLのサポートサービスを提供すると同時に、顧客が求めるデータベース製品も提供し、コンサルティングも行っている。グローバルで従業員数は300人程度だが、PostgreSQLの開発コミュニティには数多く参加している。そういった活動もあり、グローバルで3,400社以上の顧客を持ちPostgreSQLのディストリビュータとしては世界No.1だろう。
EDBが提供するデータベース製品としては、顧客の要望を取り込んでPostgreSQLをエンタープライズ用途で使えるようにしたEDB Postgres Advanced Serverがある。またデータベース本体だけでなく、運用管理、高可用性、他システムとの連携ツールなども用意されている。「顧客の要望に基づいてロードマップを作り製品を提供しています」と高鶴氏。
コンサルティングと教育についても力を入れている。さらに、サポートサービスは独自のパッチ提供や24時間365日の対応窓口をグローバルな体制で用意している。高鶴氏がもう1つ強調したのがPostgreSQL開発コミュニティでの貢献の高さだ。「バージョン9.6では、パラレルクエリー機能の実装が予定されていますが、その開発を行っている人間もEDBにいます」(高鶴氏)
顧客からの評価はOracleとの互換性の高さ
EDBのグローバルな顧客としては、マスターカードなど金融の顧客も多い。そのため高いセキュリティ要件に対応できるよう機能強化も行っているとのこと。監査機能などはコミュニティ版よりも強化されており、さらに行レベルセキュリティやSQLファイアウォール機能なども提供している。
もっとも顧客から評価が高いのが、Oracleとの互換性の高さだ。互換性機能などは、コミュニティ開発版とは距離を置いて開発したほうがいいと判断し、独自製品であるEDB Postgres Advanced Serverに実装している。次期EDB Postgres Advanced Serverでは、Oracle TuxedoやMQと連携する機能の実装も予定されている。一方でパラレルクエリーのように、すべてのPostgreSQLで実装すべき機能はコミュニティ版に含まれるよう活動しているのだ。
「Oracleとの互換性はすでにできることが多いので、今はできないケースが何かを説明しています」と高鶴氏。互換性機能でカバーできないところは、アセスメントを行いコンサルティングサービスなどでカバーする。また性能面ではいち早くコミュニティ版の次期バージョンの機能を取り入れていることもあり、コミュニティ版よりは性能は高いものがあると説明する。
細かいところでは、日本からの要求として、SJISデータを扱えるようにしているという。コミュニティ版でも手をかければSJISのデータは扱えるが、それを容易に行えるようにしているのはまさに顧客の声を聞いているEDBならではの取り組みだろう。
最後に高鶴氏は、2016年10月には米国サンフランシスコでグローバルなカンファレンスとして「Postgres Vision 2016」が開催されるので、興味を持った方はこの機会に是非参加してみて欲しいと講演を締めくくった。
Oracleとの互換性の高さと仮想化環境でのコスト最適化がポイントに
引き続き登場したアシストの徳原氏は、アシストにおけるEDBの事例を紹介した。アシストでも、EDBのビジネスは前年比で150%以上成長している。Oracle Database Standard Editionのライセンス変更をきっかけにEDBへの引き合いが増えているのだが、実際のビジネスではEnterprise Editionからの移行が65%を占めている。新規でEDBを採用する顧客も30%ほどいるそうだ。
またEDBを利用する顧客の半分ほどが仮想化サーバーの上で利用していると言う。これはOracle DatabaseではVMwareなどの仮想環境を利用する際に、稼働対象のすべてのプロセッサを課金対象としてカウントするのでライセンス費用が高騰してしまう課題があるからだと徳原氏は指摘する。EDBならば、実際に割り当てるプロセッサ分のライセンスを購入するだけでいいのだ。
実際にアシストが手がけた顧客として紹介されたのがコープネットの事例だ。コープネットの商品在庫の管理システムでEDBが採用されている。これはOracle Database Enterprise Editionからの移行で、稼働環境を仮想化することがきっかけだったと言う。Oracleのスキルを持っているエンジニアがそのままEDBでも活かすことができたのが、移行を成功させる1つのポイントとなっている。
もう1つは大手SI企業の事例で、ここではEDIのシステムをOracle Database Enterprise Editionから移行している。「システム的には成熟化したもので、維持コストを最適化するためにEDBが採用されました」と徳原氏。この事例では、Oracle DatabaseとのSQL互換性の高さが採用のポイントになった。このときは、SQLの互換性は98%あり、マイグレーションツールを利用することでスムースな移行が実現できたと言う。同様に互換性を重視したアイテック阪急阪神の事例では、SQLの互換性はほぼ100%だったとのこと。結果的にアプリケーションの改修はほとんど必要なかったそうだ。
大和総研ビジネス・イノベーションの事例は、エネルギー管理システムにおけるEDBの活用だ。これはスマートメータからのセンサーデータの収集、加工、集計でEDBが利用されているIoTの事例だ。IoTのように今後どう成長、変化するかの予測がしにくい領域では、初期段階に大きな投資がしにくい。そのような場合には、スモールスタートでき柔軟な拡張性があるEDBが評価された。
ANAシステムズの事例は、ANAグループで標準となっているOracle以外のデータベースを選択する際の、使い分けのガイドライン作成をアシストでサポートしている。「ここでも、Oracleとの互換性や仮想化環境への対応が大きなポイントとなっています」と徳原氏は語る。
EDBもOracleも熟知しているアシストだからできるサービスがある
アシストでは、商用データベースからの移行でどのような手間がかかるかを、アセスメントサービスの形で提供している。
「アシストが移行の際のチェックポイントを調べレポートします。それにより移行のハードルが高いのか、行けそうなのかを判断できるようにしています。アシストにはEDBの実績だけでなく、Oracle Databaseについても30年以上の豊富な経験値があります」(徳原氏)
データベースの経験値が豊富なアシストだからできるサービスがあり、EDBへの移行後の運用体制も含めてサポートできるのがアシストの強みと言えそうだ。