今年も米国サンフランシスコでOracleの年次カンファレンスイベント、「Oracle OpenWorld 2016」が開幕した。初日となる18日日曜日には、併催のJavaOneのキーノート、さらには会長兼CTOのラリー・エリソン氏のキーノートセッションが行われた。今年のメインテーマはクラウド、会場のあちらこちらには「The Fastest Growing Cloud Company」というバナーがあり、クラウドのビジネスが急成長していることをアピールしている。
SaaS、PaaS、IaaSの3本柱でクラウドにコミット

「Oracle Cloud 2016」というメッセージを表示してステージに登場したエリソン氏。今回のキーノートセッションの話題は、ほぼクラウド一色という感じだ。
「世代の変革の時に来ている。オンプレミスから、より少数のスーパーデータセンターによるクラウドの時代になってきた」(エリソン氏)
クラウドにはSaaS、PaaS、IaaSという3つの柱がある。SaaSとPaaSは順調に成長しており、さらに昨年正式に発表したIaaSについては、急成長していると自信を見せる。クラウド中心のビジネスに移行しても、Oracleとして製品、サービスのデザイン方針には変化はない。キーワードは「コスト」「信頼性」「性能」「業界標準」「互換性」「セキュリティ」の6つだ。
「これらはクラウドに移行する前から何ら変わっていない。製品、サービスの競争力があること、そしてその上でコストだ。コストの競争力は重要だ」とエリソン氏。この場合のコストは、製品やサービスを購入する際のコストもあり、継続して運用する際のTCO (Total Cost of Ownership) もある。この両方のコストを「最も低くする」と言う。
サービスの信頼性については、ITシステムを全く壊れないようにすることはできない。なので、壊れてもビジネスが止まらない可用性を提供する。「フォルトトレラントが重要、コストとともにこれがアーキテクチャの本質だ」とエリソン氏。
性能に関しては、データベースは最も速い必要があるという。性能が速いということは、はコストにも関係してくる。同じ処理を、1分でやるよりは1秒で済むほうがコストははるかに安くなる。そしてもう1つ大事なのが業界標準だ。
「OracleにはSQL標準に準拠したデータベースが昔からあり、世界で最も使われているJavaもある。そして、RubyやPHP、さらには最近流行のDockerといったものも、ユーザーにとっては大事なものだ。ユーザーに大事なものは当然ながらOracleはサポートする」(エリソン氏)
クラウドへの移行は加速しているが、全てがクラウドに行くまでには10年かそれ以上の時間がかかる。結果的にその間はオンプレミスもクラウドも両方を併用することになる。
「オンプレミスとクラウドを共存でき、それらを自在に使い分けられなければならない。データだけでなく、アプリケーションも、これらの間をボタン1つで移動できないとならないだろう。あるものはオンプレミスで、あるものはクラウドでと両方が使われる。アプリケーションも相互運用できることが必要だ」(エリソン氏)
もう1つクラウドで大事になるのがセキュリティだ。「データを守る。そのためにOracleは最もセキュリティ性の高いクラウドを提供できなければならないと考えている」とエリソン氏。
このあたりのクラウドに取り組む姿勢は、昨年も同様な主張をしていたところだ。昨年と違うのは、コスト部分に重きを置いて発言したことだろう。
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谷川 耕一(タニカワ コウイチ)
EnterpriseZine/DB Online チーフキュレーターかつてAI、エキスパートシステムが流行っていたころに、開発エンジニアとしてIT業界に。その後UNIXの専門雑誌の編集者を経て、外資系ソフトウェアベンダーの製品マーケティング、広告、広報などの業務を経験。現在はフリーランスのITジャーナリスト...
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