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クラウドを武器にデジタル化を推進、「1人情シス」がいま脚光を浴びる理由

 「1人情シス」と聞くと、どんなイメージを持つだろうか。――たまたまPCに詳しいからと、ITシステムのお守りを任される。システムやアプリケーションの選定から、日々の運用管理、ベンダーコントロールに至るまでを1人でこなし深夜残業や休日出勤も珍しくない――このようなネガティブなイメージを持つ方も多いかもしれない。しかし、そんな1人情シスの状況が、クラウドの登場によって大きく変わりつつある。むしろ、“1人情シスだからこそ”素早く決断し、変化の激しい時代に最新のITを新たな武器として使いこなす事例が出てきた。

BCPのためにクラウドを選び、クラウドでデータ活用環境を手に入れる

 さまざまなモノやサービスのデジタル化が進み、デジタル化への対応が競争優位をもたらす新たなビジネスの武器になってきている。しかし、デジタル化というチャレンジをしたくても、オンプレミスで1からシステムを構築していた時代は、計画からインフラの調達、開発し展開するには相当の時間と手間がかかった。特に「1人情シス」のような体制では、既存システムの運用管理業務に日々追われ、新たな取り組みはなかなかできなかった。

日本マイクロソフト マーケティング & オペレーションズ クラウド & エンタープライズビジネス本部 エグゼクティブ プロダクト マネージャー 相澤克弘氏

日本マイクロソフト マーケティング & オペレーションズ
クラウド & エンタープライズビジネス本部 
エグゼクティブ プロダクト マネージャー 相澤 克弘氏

 しかし、今ではクラウド上にITシステムのインフラがすでに用意され、アプリケーションも無数にある。クラウド上で必要なものを適宜組み合わせることで、素早く始めることができる。もちろん、それぞれの仕組みの連携やアプリケーションで足りないところはSIパートナーに依頼して開発する必要もあるだろう。組み上がったITシステムの運用管理のほとんども、今ならクラウドベンダーに任せることもできる。

 日本マイクロソフト クラウド&エンタープライズビジネス本部のエグゼクティブ プロダクト マネージャー相澤克弘氏は、「クラウドを使うことで、これまで面倒だったITシステムの運用をベンダーに任せる。そして自身で素早く意思決定し、どんどんデジタル化の新たなチャレンジができるのです。そういう取り組みができる企業は、今、急成長する傾向にあります」と述べる。

 事例をいくつか紹介していこう。プロのお掃除や宅配クリーニングなどを全国各地に届ける家事の宅配便「カジタク」。同社は従業員130名規模の企業ではあるが、ほぼ1人情シスの体制だ。カジタクでは、顧客からのオーダー受付、顧客管理、スタッフへのサービス指示管理などにITシステムを活用している。これらシステムやその上で管理している情報は、同社のビジネスを進める上で不可欠なものとなっている。

 以前は、これらのITシステムをオンプレミスで運用していたが、隣接する建物が火災となり、ITシステムがあったビルに延焼してしまう。結果、ビジネスの書類もITシステムも全てが使えなくなってしまい、事業は完全にストップ。その復旧には大きな手間とコストがかかった。

 これをきっかけに、カジタクではBCP(事業継続計画)に取り組んだ。そして、ITシステムのクラウド化を決め、インフラとして選んだのがマイクロソフトのパブリッククラウドサービス「Microsoft Azure」だった。まずは顧客管理システムをAzure上に構築し、次にオーダー受付、さらにスタッフへのサービス指示管理とAzure上のシステムを拡張している。「システム規模は拡大していますが、体制としては1人情シスのままだそうです」と相澤氏。カジタクの担当者からは「一度クラウドの便利さを知ってしまうと、オンプレミス環境を利用するなんて思わなくなる」という声があるそうだ。

 クラウド化し、システムのBCP体制も整い、カジタクのビジネスは軌道に乗る。システムをクラウド環境に移行し、運用負担などが軽減されたことで、新たなマーケティングやビジネス施策などを積極的に実行する環境も整った。たとえば、顧客満足度を向上しリピート率をあげるためには、適切なタイミングで適切なメッセージを顧客に伝えることが大事だ。どういった顧客にどのような情報をいつ伝えればいいのか。これらを導き出すために、カジタクでは業務とクラウド上のさまざまなデータを結びつけ、データ分析をもとにした科学的なアプローチをとっている。

 「カジタクでは、顧客満足度を独自に11段階で計測しサービスの評価をしているそうです。そのために適切なKPIを設定し、クラウドのシステムから得られるさまざまな情報をPower BIで分析しています」(相澤氏)

 今後さらに機械学習プラットフォーム「Azure Machine Learning」や認知サービスAPI「Azure Cognitive Services」の利用も、カジタクでは視野に入っている。Cognitive Servicesを活用すれば、顧客の顔の表情から満足度を測るための情報が得られるかもしれない。こういった最先端の取り組みに素早く取り組める。これは情シス担当者が率先してリードすることで可能となるだろう。クラウドや機械学習などの新しい技術を使えば、新たなチャレンジが容易にできる。クラウドがあり、1人情シスの素早い意思決定があるからこそ、カジタクのビジネス成長があるといえる。

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アプリケーションの開発だけでなく、ビジネスの開発もアジャイル化

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この記事の著者

谷川 耕一(タニカワ コウイチ)

EnterpriseZine/DB Online チーフキュレーターかつてAI、エキスパートシステムが流行っていたころに、開発エンジニアとしてIT業界に。その後UNIXの専門雑誌の編集者を経て、外資系ソフトウェアベンダーの製品マーケティング、広告、広報などの業務を経験。現在はフリーランスのITジャーナリスト...

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