官民データ活用推進基本法19条は、2000個問題解決を求めるための根拠条項―濱村氏
濱村:公明党の濱村進です。こういう場は初めて参加をしますので、少し緊張しておりますがよろしくお願いします。「官民データ活用推進基本法」が昨日に参議院をとおりました。平井先生、高井先生をはじめ、超党派でずっと進めてきたわけです。個人情報保護と利活用は、まず、サイバーセキュリティをしっかりと保持した上で進んできました。そういう意味では、基盤としてサイバーセキュリティがあって、その上で、個人情報の保護と利活用について両輪で回してきたというのがこれまでの経緯であったと思います。
今回の「官民データ活用推進基本法」は、具体的に言えば、防災・減災の分野、あるいは防犯分野、さらには健康分野においても非常に効果が期待できるのではないかと考えています。国会審議でも様々具体的にどういうメリットがあるのかという話がありましたが、こうしたところについて進めていくために、基本法として整備をしたところです。
その推進をするためには、「2000個問題」も解決をしていかなければならないと思います。1788ある地方公共団体も含めまして、行政の団体があります。そのなかでオープンデータについて積極的に実施してるところは、233しかありません。そういう意味でいうと、まだまだ進んでいないというのが現状です。これを推進するためにはどうすればいいのでしょうか。
各民間事業者においては「個人情報保護法」があり、中央官庁、独立行政法人等は「行政機関個人情報保護法」や「独立行政法人等個人情報保護法」があります。さらには、各地方公共団体が「個人情報保護条例」をつくり、それぞれの地域で個人情報を守りつつ、行政サービスをしているという状況があります。
このなかで、どのように一括的にデータが連携できるような環境を整えるか。今回、そこに注力できる良い機会になりました。実は、今回通った法律の第19条に、「国の施策と地方公共団体の施策との整合性の確保等」という条文がございます。「国は官民データを活用する多様な主体の連携を確保するため、官民データ活用の推進を講ずるにあたっては国の施策と地方公共団体の施策との整合性の確保その他の必要な措置を講ずるものとする」という条文です。ちょっと聞いたところではわかりにくいと思いますが、実は「2000個問題」を解決せよということを要請しているところでございます。これは、我々提案した側、立法に携わった人間は明確に意識しております。これがまずスタートなんだということで、今後、地方公共団体の皆さま、首長の皆さまも含めまして、一体となって、この「2000個問題」を解決していきたい。そのためには、総務省の方々にもしっかりと協力をいただかなければならないと思っています。
森田:はい、ありがとうございました。「2000個問題」は、それぞれの自治体ごとに固有の「個人情報保護条例」を持っているということです。当然、地方自治、地方分権と密接な関係がある問題です。分権等を維持しつつ、どう解決していくか、元三重県知事で地方分権推進のリーダーとして活躍されてきました北川先生にぜひコメントをお願いしたいと思います。
この国がグローバルに生きていく、地方がより的確に生きていくかたち―北川氏
北川:北川です。この「官民データ活用推進基本法」について、議員立法で通していただいただいた先生方に感謝したいと思います。本当にありがとうございました。
そこで平井先生に、お聞きしたいことがあります。こういったITのインフラ整備に与野党はないというお言葉でしたが、この問題については国、地方の関係なしに、お互いの話し合いによってすすめるのがとても重要だと思います。毎回、内閣府や内閣委員会にはいつもご努力いただくのですが、基本的な法律は作っていただいても、個別にそれを各所に落とし込むと、省庁の間で、権力争いといいますか権限争いというか、そういうことが大きなネックになったりします。地方がまとまっていない等、色々な理屈づけで抵抗があるとは思うのですが、そこはぜひ、内閣委員会で頑張っていただきたいと思います。
国と地方も関係ない、与党と野党も関係ないというところを背に、各省庁間も関係ないのだというかたちで、この国がいわゆるグローバルに生きていく、地方がより的確に生きていくかたちをぜひここでお示しいただければと思います。これは大きくは、国を変え、地方を変え、政治や行政を変えるとそのように思うわけです。
オープンガバメントということが先進的な自治体では進められてきましたが、まだまだ情実とか経験とかに頼る政治がずいぶんと行われております。ビックデータ、エビデンスに基づく行政というものが必要であろうということが一つです。もう一つは、高齢化社会になって、薬も医療もボーダレスになったときに、世界共通のインフラ整備がされていないと、いろんな意味で大変になってしまうなというところです。ぜひ、そういうボーダレスをITの社会でお作りいただきたいと思います。
今日は地方の首長さん方もご出席をいただいておりますが、その首長さん方のお力もお借りしたく思います。地方が、条例制定でどうのこうのということは、議論の積み重ねは必要なんですけれども、今回のこのインフラに関しては、「2000個問題」の解決については 通さなければいけないと思います。クラウドも機能しませんし、本当の意味でのオープンデータ化もできないという前提に立てば、先進的な首長さんがリードいただき、全国の首長さんをまとめて、国と対等な関係でご相談をさせていただくということが可能だと思っています。
国の方も、各省庁間の色々な縄張り争いは現実的にはあると思います。しかし、地方から、地方が乱れているからということがないようにご努力はいただきながら、ぜひ早期にこの問題について法律をもって解決していただきたいと思います。
もう一方で、95年の「分権推進法」のときには、集権という一つの既存の体制の中で、権限を分けてくださいという話しでしたから、国と地方の対立構造が非常に鮮明にならないとできない面もあったかと思います。20年の経過を経て、形式的な要件というのはかなり整備されてきました。しかし、実質的に地方は元気になったのかというと、ちっともなっていないのではないか、ということから、まち・ひと・しごと「創生法」が成立したと思います。その成立の前提には、ITなりIoTなりの技術が補完し合わないと、当然に不可能になるということがあった。
そこを大きく捉えていただいて、今回のキックオフのような法律が一日も早く施行されるように、国会の先生方にもぜひ広く理解を他の議員さんにもお示しをいただき、国全体の骨格がこう変わってくるのだという一番の根幹にここがあるということを広めていけるようになればと思っております。今日までご努力に感謝、敬意を表しますと共に、今後ともよろしくお願いを申し上げたいと、そのように思う次第でございます。
森田:はい、ありがとうございました。今度の推進法と、地方分権の問題についてもお話をいただきました。これからは少し「2000個問題」といわれる問題に焦点を絞りつつ、議論を進めていただきたいと思います。個人情報保護につきましては、それ自体が重要であることは間違いないのです。
しかし、今日の社会の場合、先ほどもご議論に出ましたけれども、例えば災害時にどうするか、安否を確認し一番重要な方、救助を必要とする方をどのように選択するか、その時に個人情報保護法というのは非常に重要になるわけです。そこで活用できなければ意味がないのではないかと思うわけです。
私自身もこのJUMPという活動や医療関係の番号制度を通して、情報の紐付けを進めていくべきだと考えております。それぞれの人の健康のレコードを残すということと、それを匿名化して構わないのですが、横に比較することでビックデータに使って、どのような病気がどういう原因で起こるのか、どのような治療法が有効なのか、そうしたことを追求していこうと。それには、そのデータが非常に重要になります。
海外の場合、北欧諸国が中心ですけれども、積極的にこれをすすめています。個人情報がどうなのかということを聞いてみますと、日本がなぜそういう風に心配をするのだと、そこでコミュニケーションがうまくいかないというような状況もあります。益々高齢化が進み、財政的にも厳しくなってくる折に、医療もそうですが、先ほども出ました国民の厚生というものを高めていくためには、この問題をクリアしなければなりません。
そこで次に、この「2000個問題」につきまして、かねてより問題提起をされてまいりました鈴木先生の方から解説をお願いしたいと思います。