データベースを軸に開発からコンサルティングまで幅広く経験
太田さんの学生時代の専攻は理工学部の機械工学。機械なのでどちらかというと時計やカメラなどのメカが専門で、コンピュータではない。授業や卒論でC言語を扱った経験はありつつも、学生時代はまだコンピュータを専門にしている感覚はなかった。しかし心のどこかで機械の製造よりソフトウェアの開発にひかれていたのかもしれない。なぜなら就職先に選んだのはNECソフト(現在はNECソリューションイノベータ)だから。太田さんは当時の心境をこう述べる。
「ソフトウェアって夢があると思いました。資材が必要なく、基本的にはロジック。なんでも自分で作れるって」
入社するとデータベースやセキュリティなど要素技術を扱う部署に配属され、太田さんはデータベースの担当となった。最初からデータベースである。太田さんは「ずっとデータベース技術ではありますが、紆余曲折もあります。製品毎に関わり方も異なります。……でも軸はずっとデータベース技術です」と言う。つまりずっと同じ事を続けてきたわけではないということ。データベースを軸に、多様な製品を通じて多様な経験を積んできた。
最初に携わったのはPostgreSQL。データベースに本格的に向き合ったのはここからだ。当時太田さんは「データベースは全てが難しい」と感じたそうだ。プログラミング言語とは発想が異なるからだろうか。いつしか太田さんはPostgreSQLのソースコードも見るようになった。ソースコードからは実装そのものを見ることができる。オープンソースのデータベースを通じて仕組みの理解を深めたことは太田さんにとっていい経験になった。
データベースの難しさに苦戦していた若きころから、太田さんはデータベースを学ぶ自負も感じていた。こう話す。「情報処理とはデータをいかに蓄積、抽出、加工、そして活用し、加工するかではないかと思います。だからデータベースは情報処理では根幹にあたり、いま自分は情報処理の根幹を学んでいるのだと感じていました」
太田さんのデータベース経験は多岐にわたる。まずNECが提供する統合運用監視ツール「WebSAM」に関わる機能(ツール)の開発がある。太田さんが担当したのは主にPostgreSQLやMySQLと会話するエージェントなど。そのほかPostgreSQLを対象にデータの検証復旧機能や透過的暗号化機能、マルチテナント機能などの開発も担当した。オープンソースのデータベースに対してこうした補完を行うことで、安心して企業利用できるように昇華させている。開発を通じて「ソフトウェアがどのように動いているのか、その原理原則を学ぶことができました」と太田さんは述懐する。
SIerとして関わったこともある。商用データベースを活用した業務システムの構築、あるいは導入、構築、運用のコンサルティングなど。時には別のデータベースへと移行するマイグレーションを扱うこともあった。