iPhone、AWSの登場とビッグデータブーム--10年の変化
マークロジックのゲイリー・ブルーム氏はこの10年の変化から語り始めた。iPhoneが発表されたのは2007年1月。同年、マイクロソフトのスティーブ・バルマー氏は「iPhoneが市場で大きなシェアを取る可能性はゼロだ」と発言していたという。
Amazon Web Services(AWS)がサービスを提供開始したのは2006年。このあたりからクラウドが大きく注目され始めたものの、2008年の時点でオラクルのラリー・エリソン氏は「訳が分からない。こんなばかなことがいつまで続くのか」と否定的だった(オラクルではグリッドコンピューティングを進めていたという背景もある)。
ブルーム氏は「IT業界で最も尊敬される企業幹部でさえ、クラウドのトレンドを疑い、ビジネスに影響を及ぼさないと考えていたのです」と述べ、ITやビジネスの将来を予見することの難しさを強調した(なおブルーム氏は2000年までオラクルに在籍していた)。
最近ではテクノロジーによる創造的破壊はあらゆる分野に波及している。ブルーム氏が例として挙げたのはアメリカのシリコンバレーにあるピザ店「Zume」。ここではピザ調理の全行程をロボットが行っている。今のところ配達は人間がしているものの、将来的には全て機械が担うことを目指しているという。ほかにも医療ではオンラインで診療が行われ、自動車業界では工場のIoT化が進むなど、テクノロジー進化の例を挙げたらきりがない。
続けて「データベースの世界も大きく変化しています。次世代型データベースの潮流は5~7年前から始まっています」とブルーム氏。初期に注目されていたのはデータの量、スピード、それから非構造データへの対応。言い換えれば関心はその程度だった。
その後に「ビッグデータ」が本格的にブームとなる。ブルーム氏は「トレンドというより大きなイベントであり、テクノロジーではありません。実はデータサイズはソリューションとはあまり関係がないのです」と話す。このあたりからデータベースではデータの複雑性、異種混交化、どこから来ているかなども関心の対象に加わる。現在ではビジネスを遂行するためにデータを統合し、リアルタイムで処理できることが要求されているとブルーム氏は解説する。
技術は多様に進展したものの、全てを満たすデータベースはほとんどないとブルーム氏は考えているようだ。「当初はオープンソースデータベースで全てなんとかなるという考えもありましたが、オープンソースではエンタープライズの要件を十分に満たせません。レガシーのデータベースベンダーは新しいデータ形式に対応しつつも、格納できるようにしただけ。Hadoopも技術としては素晴らしく、データ分析にはいいですがユースケースが限られています。クラウドサービスとして提供されるデータベースだと、クラウドベンダーが限定されてしまうことが多いです。NoSQLには多様な技術があるものの、エンタープライズ仕様は限られています」(ブルーム氏)