本連載がセミナーになります!
■■■民法改正!判例に学ぶIT導入改善講座―失敗しないプロジェクトの掟■■■
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システム導入の契約書を精査していますか?
これは私の経験からの話で、必ずしも全てがそうというわけではありませんが、システム導入の契約書はベンダ側にもユーザ側のシステム担当者も、通常、あまり熱心に精査されず、双方の法務部門に任せたり、前例をそのまま踏襲するようなことが多いようです。しかし、そうしたことが原因でトラブルになり、訴訟に発展する例も少なくありません。実は、前回取り上げた判例も、その原因の一部には契約書の不備があり、パッケージソフトの契約についてユーザが注意すべき点についての示唆が含まれていました。簡単に言えば、パッケージソフトを利用したシステム開発のプロジェクトが失敗したとき、使用予定だったソフト自体の売買契約もなかったことになるのかという話です。結果として使うことのできなかったソフトの代金をユーザ企業は、それでも支払うべきなのかどうか? それとも、失敗したからには自動的にパッケージソフトの契約もなかったことになるのか? その辺りについて考えてみたいと思います。
システム開発契約とパッケージソフトの売買契約の関係が問題になった例
まずは、前回も取り上げた判例の概要をもう一度、ご紹介しましょう。
(東京地方裁判所 平成24年5月30日判決より)
販売・生産管理システム開発を計画したユーザ企業が、パッケージソフトを使用したシステムの開発を提案したベンダと契約を結んだ。開発は、細分化され順次、個別契約と納品が繰り返される形式で実施されたが、先行して納品されたシステムからは本稼働後に数々の不具合が発覚し、結局、実施中の開発プロジェクトは中止された。
ユーザ企業は、ベンダに対して既払い金の返還等、約1億9000万円の支払いを求めて訴訟を提起した。
前回ご紹介したのと同じ事件です。前回は詳述しませんでしたが、この分の後半にある ”既払い金の返還等、約1億9000万円” の中にはシステム開発に使用するパッケージソフトの代金(約3500万円) <売買契約> が含まれています。つまりユーザは開発が失敗した以上、パッケージソフトの無用の長物なのだから、その分の代金も返してほしいと訴えているのです。ところがベンダは返還を拒みます。 実はパッケージソフトウェアの売買とシステム開発サービスは別の契約になっており、片方がダメになったからと言って、自動的にもう片方がなかったことになるということはない。パッケージソフトウェアは独立した納品物なので、その分は払ってもらうとの主張です。