顧客データ分析で気づいた、収益と費用の関係性
三菱東京UFJ銀行とキャリアのKDDIが50:50の割合で共同出資し設立された「じぶん銀行」。
「『じぶん』という名前はセルフの銀行という意味合いから来ています」と説明するのは、じぶん銀行 執行役員 マーケティングユニット長 兼 営業副ユニット長 兼 経営戦略部部長の井上大輔氏だ。じぶん銀行の創業は2008年、まだ新しい銀行だ。開業当初は世の中はまだフューチャーフォンの時代、KDDIによる携帯電話を通じ利用できる銀行をとの構想に基づき設立された。時代は変わり、現在は当然ながらスマートフォンに全面的に対応している。
「ネット銀行の中でも、スマートフォンに特化しています。特徴的なのは、20代から40代、さらには50代という比較的若い世代の利用者が8割近くを占めていることです。さらに他のネット銀行と比べて、女性の比率が多いと言うのもあります」(井上氏)
開業以来、口座数および預金残高は右肩上がりで増加している。もちろんマイナス金利政策のあおりも受け、あまり預金残高が増えない状況も今はある。
じぶん銀行の最大の特長は、スマートフォンのアプリケーションで銀行業務の全てが行えることだ。他のネット銀行では、スマートフォン経由では行えない取引も多い。「スマートフォンアプリケーションをATMにかざすだけで現金を引き出せるというのは、じぶん銀行が最初に実現しました。さらに住宅ローンの取引も、オンラインだけで完結します」とのこと。
そのようにネット、スマートフォンに特化し順調に成長しているように見えるじぶん銀行にも、2つの課題があった。1つが顧客の数がまだまだ少ないこと。9,000万人を超える会員数がある楽天グループ、その金融機関である楽天銀行には600万人ほどの利用者がある。一方、KDDIと三菱東京UFJ銀行には、それぞれ4,800万、4,000万ほどの利用者がいるが、じぶん銀行の利用者は250万人ほどにとどまっている。
もう1つの課題が収益と費用の関係性だ。顧客のデータを分析し収益と費用から利用者を分類すると、4割近くの利用者が売り上げにあまり貢献できていないと分かった。さらに費用だけかかっている顧客、口座はあるがほとんど利用されていない顧客を合わせると、じつに8割近い顧客が収益にはほとんどつながっていないことが明らかになったのだ。
そこでまずは利用者を増やすために、KDDIの携帯電話サービスであるauとの連携を強めている。auのような大手携帯キャリアは、格安携帯サービスとの競合で利用者が流出傾向にある。流失を阻止するために、携帯電話以外のサービスを充実化しており、じぶん銀行もそんなサービスの1つと位置づけられている。さらにキャリア決済を活用するエコシステムを拡大し、クレジットカードや電子マネー、au WALLETなどと連携する銀行としてじぶん銀行を活用してもらうよう取り組んでいる。