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クラウド普及のカギを握る、主要団体の標準化動向を追う

  2011/01/20 07:00

SNIA CSI、CSA、Jericho Forum、OGC、CBA、ODCA ・・・

クラウド環境下のデータ・マネジメント規格の策定を進める「SNIA CSI」

SNIA Cloud Storage Initiative(SNIA CSI)  

 SNIA Cloud Storage Initiative(SNIA CSI)は、ストレージ・ネットワーク技術の業界団体Storage Networking Industry Association(SNIA)において2009年10月に設けられた作業部会SNIA Cloud Storage Technical Work Groupが運営するコミュニティである。  

 活動の成果として、2010年4月にクラウド管理インタフェース規格の「Cloud Data Management Interface(CDMI)」が策定されている。同規格は、クラウド・ストレージに格納されたデータのサービス・レベル管理や、複数のクラウド・サービス間のデータ移動に関する共通仕様が定めたもので、同年7月よりリファレンス実装作業ドラフト版が公開されている。

ガイドラインを刊行して、クラウド利用時のセキュリティにまつわる諸問題を啓蒙する「CSA」

Cloud Security Alliance(CSA)   

 Cloud Security Alliance(CSA)は、イーベイ、PGP、クアリス、ING、セールスフォース・ドットコムなどの企業によって2009年4月に設立された、クラウド環境におけるセキュリティ確保の方策を追求する業界団体である。  

 同団体はAPIなどの規格の策定を行わないが、クラウド・サービス利用時のセキュリティ・レベルを高める技術の啓蒙や書籍『CSA クラウド・セキュリティ・ガイダンス』(現在、第2版)の執筆・刊行などを手がけている。

CISOが求める要件を満たしうる、クラウド環境でのセキュアなコラボレーションを追求する「Jericho Forum」

Jericho Forum  

 Jericho Forumは、2004年1月に業界団体のThe Open Group内に設立された、企業のCISO(最高情報セキュリティ責任者)におけるコミュニティ組織である。  

 同組織においては数年前よりクラウドの活用が検討課題に上がり、2009年5月には賛助会員としてCSAに加盟。以降、CSAと共同で、クラウド環境においてセキュアなコラボレーションを確立する手法の研究を進めている。

日本発クラウドが持つアドバンテージの最大化をミッションとする「OGC」

オープンガバメントクラウド・コンソーシアム(OGC)  

 オープンガバメントクラウド・コンソーシアム(OGC)は、政府系クラウド・サービスの構築および各種規格の策定・標準化を目的とした日本の業界団体である。同団体に参加するのは、日本オラクル、IIJ、アクセンチュア、TIS、NEC、CTC、新日鉄ソリューションズ、沖電気、有限責任監査法人トーマツなどで、それぞれが得意領域を持ちよる形で活動が行われている。

 OGCの前身は、政府のe-Japan戦略に基づいて2004年に発足し、当時のサンが主導したオープンスタンダード・コンソーシアム(OSC)だ。活動5年目を迎えた2009年6月、OSCは電子政府システム規格・仕様のオープン化という活動の軸足をクラウドへとシフトするために再スタートを切ることとなった。その際に示された新しい活動方針は、政府主導のクラウド・モデルとして各国に先駆けて始動した、総務省の霞ヶ関クラウド・プロジェクトに反映されている。

 OGCは、DaaS(Desktop as a Service)や医療分野でのSaaS(Software as a Service)、共通アイデンティティ、監査/セキュリティ/リスクマネジメントなど、クラウドにまつわる広範なテーマの分科会を設けている(図2)。現在、そのなかでも特に注力しているのが環境配慮型データセンターへの取り組みである。この取り組みにおいては、データセンターのエネルギー効率指標PUE(Power Usage Effectiveness)で世界最高レベルに相当する1.2の達成や、日本の電力品質やデータセンター設備の要件に即した「日本版TIA942」の実現といった目標が掲げられている。

 上述の目標に向かう過程でOGCは、地球環境への配慮はもちろんのこと、データセンターが地価の高い都市部に集中しているうえ、電気代も高額であることから、現状、他国の後塵を拝している日本のデータセンターのコスト競争力の引き上げを目指している。

図2:オープンガバメントクラウド・コンソーシアム
(OGC)の組織体制 出典:OGC

日本国内におけるクラウド関連ビジネスの活性化を目指す「CBA」

クラウド・ビジネス・アライアンス(CBA)  

 クラウド・ビジネス・アライアンス(CBA)は、2009年10月に発足した、SaaS/PaaS/IaaS事業者がそれぞれ提供するクラウド・サービスの相互連携を目的とした日本の業界団体である。ネットワンシステムズが主導し、趣旨に賛同したエクシード、ソリトンシステムズ、ビープラッツなど15社によって設立され、特別会員/正会員企業の数はSaaS/PaaS事業者を中心に80社以上に達している。

 CBAの特徴は、クラウド・ビジネスのトライアルと、「SaaS/PaaS/IaaSイネーブル・フレームワーク」と呼ばれるフレームワークの策定/技術検証というビジネスとテクノロジーを活動の2本柱に掲げている点にある。その成果として、同フレームワークの一部のAPIや、OpenSocialベースのSaaSユーザー・インタフェースの標準化作業をはじめ、SaaS/PaaSのマーケットプレース「CBAプラッツ」の開設、クラウド・サービスの継続的な提供に向けたサービス・エスクローの仕組みの検討などが進められている。

グローバル企業が集結し、クラウド・データセンターの要件定義に挑む「ODCA」

Open Data Center Alliance(ODCA)  

 Open Data Center Alliance(ODCA)は、2010年10月に設立された、クラウド時代のオープンなデータセンターのあり方を検討し啓蒙を図る業界団体だ。自社の戦略として掲げる「クラウド2015年ビジョン」に沿って設立を主導したインテルが技術アドバイザーとなり、BMWやJPモルガン・チェース、ドイツ銀行、マリオット、チャイナ・ライフ、シェル・グローバル・ソリューションズら大手グローバル企業からなるステアリング・コミッティが組織の舵取りを行っている。また、AT&TやCERN、モトローラ、ノキア、ベライゾンなどの企業が一般会員として参加している。

 ODCAが目下の活動目的として掲げるのは、企業におけるIT面での諸課題の解決と、今後さらに増していくことになるクラウド・インフラへのニーズの充足を共に可能にする次世代データセンターの要件の明確化である。具体的には、相互接続性と柔軟性に富んだ業界標準の「Open Data Center利用モデル」の策定が進められており、インフラ/マネジメント/セキュリティ/サービス/政府とエコシステムという5つの作業部会が同モデルの策定作業にあたっている(図3)。ODCAによれば、現在、同モデルのバージョン0.5が公開されており、2011年初めにはバージョン1.0の公開が計画されている。

図3:Open Data Center Alliance(ODCA)が策定を進める
「Open Data Center利用モデル」の作業ロードマップ 出典:ODCA

                           

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 以上、クラウド・サービスの相互運用性向上やセキュリティの確保に取り組む主要団体の動向を俯瞰した。

 特に、クラウドのセキュリティとコントロール(データの所有・制御権)にまつわる仕様/規格に関しては、自社におけるクラウド適用に二の足を踏む企業の多くが依然として、セキュリティ面での不安やデータの所在を理由に挙げている状況があるため、早い時期にスタンダードと呼べる仕様や技術が確立されていくことを期待したい。



著者プロフィール

  • 河原 潤(カワハラ ジュン)

    ITジャーナリスト 明治大学文学部卒業後、教育系出版社を経て、1997年にIDG入社。2000年10月から2003年9月までSun/Solarisの技術誌「月刊SunWorld」の編集長を務める。同年11月、企業コンピューティングの総合情報誌「月刊Computerworld」の創刊に携わり、同誌の編集長に就任。企業のITリーダーを対象とする月刊誌とWebの両メディアで、エンタープライズITの全領域を追いかける。2008年11月、「月刊CIO Magazine」の編集長に就任。CIOの役割と戦略策定、経営とITのかかわりをテーマに取材を重ねる。2009年10月にIDGを退社し、ITジャーナリストとして始動。

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