セールスフォース・ドットコム(以下、セールフォース)およびMuleSoft Japan(以下、MuleSoft)は4月20日、2021年度のMuleSoftの日本市場における戦略を発表した。
セールスフォースでは、1999年の創業当時からCRMビジネスを展開しており、多くの企業の製品を取り入れながらポートフォリオを拡大してきている。同社 マーケティング本部 プロダクトマーケティング/マネジメント シニアディレクターを務める林淳二氏は、「セールスフォースはCRMの企業だと思っているかもしれませんが、それだけではありません」と述べる。
同社は2018年を契機に、MuleSoft、Datorama、Tableau、Vlocityなどを統合することで、“全方位型のCRMソリューション”として「Customer 360」の戦略を強化しているという。その中でも、MuleSoftは業界毎の個別システムとの接続を担うなど、レガシーシステムのモダナイズやDX支援の促進において重要な位置を占めていると林氏は述べる。
次に、MuleSoft Japan 常務執行役員 小枝逸人氏が同社のソリューションを紹介した。
MuleSoftの「Anypoint Platform」は、あらゆる場所に格納されたあらゆるデータをアンロックすることで、データを利活用するための製品だという。小枝氏は、「最も重要視しているのは、リアルタイムのデータ利活用だけでなく、お客様のビジネス課題を発見することです。その上で、どのように動かしたいのかをパートナーと実現していくことがミッションです」と説明する。
特に日本では、システムの老朽化や肥大化、複雑化、ブラックボックス化という問題が顕在化し、重要な課題となっているという。その状況下で、Anypoint Platformを軸にMuleSoftでは、これらの課題をアンロックし、リアルタイムでデータ利活用・再活用を実現できるとした。
同製品の特長として同社 執行役員 小山径氏は、APIによるマイクロサービス化やAPIのカタログ化など、API主導型のアーキテクチャが特徴だと説明する。API自体を再利用可能な状態にすることで、既存のAPIとマイクロサービスをブロックのように利用し、変化を続けるニーズにも対応することができるという。
同製品は既にNECやSMBC、東京海上日動などで導入されており、レガシーやマルチクラウドをつなぐ役割として利用されている。たとえばカインズではDIYの予約サービス「CAINZ Reserve」のリリースに活用されており、APIの活用で内製化のスピードを高め、ITコストの削減などを同時に成立しているという。
「ゼロトラストモデルのセキュリティを備えているだけでなく、オンプレミスやクラウドなど環境を選ばずにデプロイできることも特徴です。多くのサービスで構成されていますが、これをサブスクリプションで提供することで“APIの民主化”を実現していきます」(小山氏)。
また小枝氏は、MuleSoftの日本戦略について、「世界中のすべてのシステムやデバイスを接続して、顧客のビジネスを価値を高めることでDXをけん引する」「米国、APACのベストプラクティスを継承しつつ、日本に合った体制へ移行する」「パートナーや顧客との信頼関係を築き、多様性を尊重し、成長・成功を追求する」という3つの軸を示した。
日本に合った体制へ移行するという部分では、セールスフォースとのシナジーを活かしながら、様々な業界のパートナーと協力することが重要だとした。小枝氏は、セールスフォースの企業文化でもある「Ohana(家族)」を踏まえたうえで、すべてのトレイルブレイザー(先駆者)と助け合い、喜びあいながら世界をよりよいものにしていくと説明する。
加えて、戦略上重要になってくる存在として、エコシステムを構築するパートナーを挙げた。日本市場において既に顧客との信頼関係を築き、既存システムを構築してきたパートナーと歩調をあわせることで、データの利活用を推進したいとした。
MuleSoftでは、これらの日本戦略を実現するため、2月に社内の組織変更を行ったという。これにより、トレーニングや資格などのドキュメント類をローカライズし、日本語でのサポート体制を段階的に拡充するとしている。
最後に小枝氏は、「お客様に耳を傾けながら、日本市場にコミットメントすることが最優先です。その上で、セールスフォースのカルチャーを継承しながら、パートナーとともに新たな市場を切り開き、DXを実現できるよう取り組んでいきます」と展望を述べた。
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