デロイト トーマツ コンサルティング(デロイト トーマツ)は、企業と個人を対象にDX(デジタル・トランスフォーメーション)時代の人材育成の実態と課題を探った「デジタル人材育成に関する実態調査2023~人的資本経営時代に取り組むべきリスキリングとは~」の調査結果を発表した。
同調査では、252社を対象に、DXの取り組みや人材施策・育成などについて質問。DX銘柄企業(23社)とDX認定企業(26社)の計49社を「DX先行企業」、他の203社を「一般企業」として分析したという。主な調査結果は、以下のとおり。
企業のデジタル人材育成・研修施策の実施率
企業に対する調査では、育成・研修施策を推進している実施率は一般企業で半数近く(46%)、DX先行企業で87%と高い割合だった。一方、育成・研修の前提となる「経営ビジョン」は一般企業(26%)・DX先行企業(66%)、「人材ニーズの定義」は一般企業(26%)・DX先行企業(50%)、「育成計画」は一般企業(25%)・DX先行企業(68%)、学びを活かす「実践機会の提供」は一般企業(31%)・DX先行企業(71%)と、いずれも一般企業の実施率がDX先行企業よりも大きく下回った。一般企業では、e-learning受講環境の提供など、比較的始めやすい「学ぶ場」の提供から進めている傾向がうかがえるという。
一方、DX先行企業においても、学びを促進する「コミュニケーション」は18%、評価や報酬に紐づく「人事制度」の整備は8%にとどまり、学ぶ「動機づけ」につながる施策まで着手できていない企業が大半となっている状況だとしている。
デジタル人材育成施策の課題認識
一般企業においては、デジタル人材育成施策の課題を感じている項目は、「経営ビジョン(45%)」「育成計画(57%)」などで、「育成・研修」より手前の施策に課題を感じる割合が高い状況となっている。
一方、DX先行企業においては、「実践機会の提供(53%)」や「人事制度(47%)」といった「育成・研修」後の施策についての課題認識が高くなっている。特に、「実践機会の提供」においては、DX先行企業の多くは実施率が71%と既に着手している一方で、依然、課題を抱えている企業も多いことが明らかになったという。
また、一般企業、DX先行企業ともに、「育成・研修」を実施している企業においては、制度導入をしてもその内容にはまだ改善の余地があると考えている割合が高い状況だとしている。
DXに対する取り組み
全体の9割以上の企業がDXを検討・推進しているが、多くは業務効率化にとどまっているとのこと。一方で、DX先行企業は、「新規製品・サービスの創出」92%、「既存製品・サービスの付加価値化」76%といった付加価値向上目的に加え、「企業文化・組織マインドの根本的な変革」といった従業員を対象とした変革にも76%が取り組んでおり、一般企業との差異が表れている。一般企業では、よりデジタル人材の必要性が読み取れるという。
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