法人向けグループウェア「LINE WORKS」を提供するLINE WORKSは、2024年5月28日、「LINE WORKS DAY 24」を開催した。基調講演では同社の代表取締役社長である増田隆一氏と本部長の大竹哲史氏が登壇。LINE WORKSの最新動向やAI機能の強化、新製品発表などについて語られた。また事例講演として大成建設の田中吉史氏が建設現場におけるLINE WORKの活用事例を発表した。
LINE WORKSの進化とAI機能の拡充
増田氏は冒頭、LINE WORKSの価値について言及。「ビッグマックは480円します。一方LINE WORKSは、スタンダードプランで1ヶ月450円。ビッグマックより安いんです。物価上昇が止まらない中、この金額で皆さんにできるだけ価値を感じてもらえるようなサービスを提供しようと思います」と語った。
現在、LINE WORKSの導入企業数は46万社を超え、利用者数は500万人に達している。社外の取引先とのやり取りにもLINE WORKSが用いられるケースが増加しており、単なる社内コミュニケーションツールの枠を超えて活用の幅が広がっている。
また、LINE WORKSでは文字認識や音声認識・合成、映像認識といったAI機能の製品も拡充している。「LINE WORKS AIプロジェクト」として、生成AIをLINE WORKSの各機能に組み込む取り組みが進められている。
増田氏によれば、LINE WORKSのアプリケーションをコンポーネント化し、より高度な機能を提供していく方針だ。「特に精度の高いAIに関しては、皆さんも非常に関心が高い。そのためにコンポーネント化して、これからの機能拡張に対応していく」と述べた。統合ログイン環境を用意することで、ユーザーにとって使い勝手を損なわない工夫も施すという。
声と文字を融合した新アプリ開発中
事業企画本部長の大竹氏からは、声を活用した新アプリの開発についての発表があった。小売業の例を挙げた。小売販売の現場では、本社と店長はLINE WORKSで文字でのコミュニケーションが出来るが、接客中の店舗スタッフは文字でのやり取りが難しい。店長は文字と音声を使い分けて本社と店舗をつなぐ必要がある。こうした課題を解決すべく開発中なのが、トランシーバーのように声と文字を同時に使いコミュニケーションができる新アプリだ。複数のチャネルを用意し、話した内容がAIで自動的にテキスト化される。音声はフィラー("あー"や"えー"などの不要語)が除去され、必要な部分だけが書き起こされるため、のちの振り返りもしやすい。
大竹氏は「誰でもシンプルで分かりやすい操作画面を目指している」と強調。2025年初頭のリリースを予定していることを明かした
増田氏は、LINE WORKSのセキュリティ強化についても言及した。「LINE WORKSが皆さんから預かっているデータは、すべて国内のデータセンターで保管しています。災害対策の観点からも、複数のデータセンターに分散させ、いざという時にもサービスを止めない体制を整えている」と説明。国際認証の取得も進めているという。
さらに、「LINE WORKS プライバシーセンター」というWebサイトで、セキュリティに関する取り組みを広く公開。責任共有モデルの考え方を解説している。新たに「セキュリティホワイトペーパー」を公開し、同社のセキュリティ対策だけでなく、ユーザー側に求められるセキュリティ対策についても言及している。
大成建設の LINE WORKS導入の背景とメリット
続いて、大成建設の建築本部 生産技術イノベーション部 生産技術ソリューション推進室 室長の田中吉史氏が登壇。建設現場の課題と、それを解決するツールとしてのLINE WORKSの有用性を説いた。
大成建設がLINE WORKSの導入を決めた背景には、現場の声があった。『無料のLINEを使ってやってることを、現場で普通にやりたいというニーズが非常に多かった」と明かす。一方で、セキュリティ面の課題もあった。
「現場では、利害の異なる数百社、数千人もの職人さんが集まる。その中で情報共有や情報の統制を図るのは容易ではない。そこで選んだのがLINE WORKSだった」(田中氏)
同社がLINE WORKSを選んだ理由は、導入・運用コストの低さにある。無料版LINEと同じ使い勝手なので、導入に際して教育コストがほとんどかからないことが利点だ。
「Microsoft Teamsも社内ツールとして全社で使っていますが、現場で数百人が入り乱れる環境では少し重たい。一方でLINE WORKSなら、教育コストゼロで現場にもストレスなく使ってもらえる。そこが決め手になりました」(田中氏)
現在、大成建設の建築現場約300か所のうち、実に3分の2にあたる190か所以上でLINE WORKSが導入されており、ユーザー数は1万人を超える。具体的な活用シーンとしては、「安全管理」の面で大きな効果を発揮しているという。
「昔は、現場で職人さんを探して注意喚起の写真を見せるのに、半日かかることもありました。今はLINE WORKSですぐ写真を共有できる。そのスピード感は全然違います」(田中氏)
図面の共有、タスク管理、リアクション機能を使ったコミュニケーションの活性化など、LINE WORKSならではの使い方も定着してきた。中でも好評なのが、落とし物の写真共有による時間短縮だ。
「現場って意外と落とし物が多いんです。拾得物の写真をLINE WORKSに投稿すれば、すぐ持ち主が見つかる。そうやって少しずつ現場の生産性が上がっているんです」と田中氏は説明する。
大成建設は、防災分野でもLINE WORKSを活用している。ドローン会社と協定を結び、災害時の被災状況をリアルタイムで共有。「日常と非日常」をシームレスにつなぐ取り組みを進めているという。
「平時から使い慣れたツールだからこそ、いざという時に威力を発揮する。日常の延長に非日常があるという考え方は、防災の分野にもつながります」(田中氏)
最後に田中氏は、「今やコミュニケーションを図るためには、情報共有は避けて通れない。だったら、できるだけやりやすい環境を整えるのが近道」と強調。社内外の垣根を越えてつながることで、新しいイノベーションが生まれると展望を示した。