ForeScout(フォアスカウト)は2026年7月28日、都内で日本市場における事業戦略説明会を行った。そこで、国内での事業規模を2029年末までに3倍に拡大するとの目標を掲げた。
ForeScoutは、2000年に創業したサイバーセキュリティ企業だ。日本でも20年以上にわたり事業を展開している。IT、IoT、OT、IoMTといったIT資産の継続的な検出・可視化から、リスク評価、ネットワーク制御、オーケストレーション、統制、コンプライアンス保護までをオールインワンで管理できる「ForeScout Vistaro」プラットフォームを主力製品とし、重要インフラや政府機関、製造、金融などといった厳格な業界を中心に支持されている。

会見には本国CEOのバリー・マインツ氏も来日した。同氏は、テクノロジーの進化により顧客のIT環境で起こっている変化をいくつか指摘。たとえば防衛分野では、接続デバイスが爆発的に増加したことで、ネットワークからいかに不正デバイスを切り離すかが課題となっている。また、公共分野でも、交通や電力、水道、防犯カメラ、行政サービスなど、あらゆるものがデジタル化され、オンラインに接続される時代となった。
民間でも大きな変化が起こっている。たとえば金融業界は、一度すべてのシステムが停止してしまえば、世界中の社会機能に混乱が生じてしまう分野だ。つい先日、どんな脆弱性でも発見してしまうClaude Mythosが登場したときには、日本でも政府と金融庁が異例の緊急対応を行った。現在、一部のメガバンクには一般公開されていないMythosへのアクセス権が認められている。
こういった具合に、様々な業種・分野がテクノロジー環境の変化によるセキュリティやコンプライアンスの対応に追われている。マインツ氏はこうした課題に対し、ForeScoutが既にソリューションや機能強化を提供してスピーディに対応している点を強調した。
ForeScoutができること(一部)
デバイスのネットワーク接続前コンプライアンス確認、継続的なポリシー適用、ラテラルムーヴメント(横展開)防止、完全な可視化、完全な履歴管理、複数ネットワーク環境におけるセグメンテーションの適用、横断的なリスク管理、コンプライアンス管理、ネットワークの耐量子セキュリティ確保、200以上のソリューションの脅威検知に対応、数十億件のイベントから対応が必要な脅威だけを特定、IT・OT・IoTのリアルタイム監視、オーケストレーションと制御、経営層・取締役会向けレポーティング
つまり、フロンティアAIモデルの進化や量子コンピューター時代の到来、AIやIT資産の増加によるアタックサーフェス(攻撃対象領域)拡大といった最新の技術トレンドに対しても準備万端ということだ。

加えて同社は、Vedere Labs(ヴェデレ・ラボ)という専任の脅威研究・調査機関を有している。そこでリサーチを担当しているダニエル・ドス・サントス氏も、マインツ氏とともに来日した。
Vedere Labsで得たインテリジェンスや研究成果は、Vistaroプラットフォームや、そこで稼働する同社独自のAI「Vistaro AI」にも脅威インテリジェンスとして実装されたり、機能強化・製品開発に活かされたりしている。

Vistaro AIとは、データを自動で収集・分析、さらには統合し、エンドユーザーの役割に合わせてパーソナライズされた推奨アクションを提示するAIだ。加えて、ネットワーク担当者やセキュリティ担当者の毎日の業務を可視化・管理する「My Day(マイ・デイ)」というパーソナライズダッシュボードもVistaroプラットフォーム上で提供され、リアルタイムで社内のアタックサーフェスを監視・把握するVistaroが各担当者(ユーザー)の役割ごとにプライオリティの高い対処項目、実行すべきアクションを分かりやすく提示する。
数百万のデバイスがネットワーク上で無防備に露出している
サントス氏は、日本における攻撃対象の上位10業種と、攻撃者の動機、攻撃者の出自を紹介した。現在、我が国の医療や製造業、テクノロジー企業をターゲットとした攻撃が急増しており、その背景には金銭的な目的のほか、スパイ活動も潜んでいると同氏。また、引き続き国家を背景とした脅威アクターも活発化の傾向にあるとした。

たとえば製造分野においては、日本はサプライチェーンの重要な拠点であり、価値の高い知的財産を豊富に有している。いわゆるハブ的な地域だといえるだろう。攻撃者や侵入者は、工場などの産業用デバイスにアクセスし、データを窃取したり、オペレーションの設定を書き換えたりする。
また、これは日本に限った話ではないが、世界中で何百万ものデバイス(カメラ、ルーター、プリンタ、OTなど)がインターネットに直接接続されており、いわば“露出”した状況になっているという。工場のコントロールシステムや、太陽光発電のデバイスなどが、インターネット上で無防備に公開されているということだ。攻撃者は、こうしたデバイスを簡単に探索・特定できてしまう。

日本市場にはグローバル以上の成長余地がある
続いて日本法人の代表を務める北川剛氏が、日本市場における事業戦略を説明した。
「今こそ日本での事業を拡大する攻め時だ」と同氏は語る。それを後押しする背景としては、先述のフロンティアAIモデルの進化と、能動的サイバー防御関連法案をはじめとする国内でのサイバー防衛の環境整備が挙げられた。

また、経済産業省が主導するサプライチェーンに係るセキュリティ対策評価制度をはじめ、産業界向けの各種規制にもForeScoutが対応できることをアピールした。たとえば、様々な規制やガイドラインでは、最初の基本として「組織におけるIT資産をすべて把握し、脆弱性を特定し、コントロールできる状態にする」ことを最優先ステップとして要請・推奨しているが、これはまさにForeScout製品の得意領域だ。
同社が日本市場で掲げる3つの成長戦略は以下のとおり。
- 重点業界での大型案件注力:金融、製造、重要インフラ、政府機関など15の重点業界において影響力のある戦略的な顧客に対し、大型かつ強固な提案を推進する
- パートナー拡大:既存パートナーだけでなく、100以上のテクノロジーアライアンスパートナーとの連携も拡大・統合を進め、共同提案の体制なども強化する
- プレゼンス強化:イベントなども活用し、日本市場での認知拡大を図る
さらに、2029年末までのビジネス目標として、事業規模を現在の3倍に拡大することが掲げられた。グローバルでは約2倍という目標を掲げているが、日本市場にはそれ以上の確実な成長余地があると判断したとのことだ。加えて、パートナーの規模も2倍に拡大すると北川氏。これらの目標達成に向けた日本法人の組織体制も強化を図っていくと述べた。
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名須川 楓太(編集部)(ナスカワ フウタ)
サイバーセキュリティとAI(人工知能)関連を中心に、ソフトウェア/ハードウェアを問わず国内・海外の最新技術やルールメイキング動向を取材。そのほか、DX推進、企業財務・IRなどのコーポレート領域でも情報を発信。武蔵大学 経済学部 経済学科 卒業。
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