このイベントは、XML1.0勧告10周年を記念して、XMLの仕様の発足から10年が経過した現在、幅広く社会インフラとして普及しているXMLの現状を総括し、未来を展望しようとするもの。鼎談や講演は10以上におよび、XMLに関する技術、産業界のキーパーソンが集まった。
「XML1.0勧告を振り返って~XMLの本質とは~」と題した鼎談では、XMLの仕様設計で有名な国際大学 併任研究員 村田真氏、日本IBM執行役員 東京基礎研究所長 丸山宏氏、OASIS日本代表 アクティブ・ブリッジ株式会社 代表取締役社長 岡部恵造氏が登場した。
議論は、岡部氏の質問に、村田氏、丸山氏が答える形で進められ、冒頭、岡部氏より、XML10周年の感想を問われた村田氏は「XMLで10年も飯が食えるとは思えなかった」と会場を沸かせた。XMLの仕様策定が成功した理由としては、1)XML1.0そのものは短期間に出来上がったように見えるが、様々な要素技術の長い準備期間があったからこそすぐにできた(村田氏)、2)仕様策定のときにそれほど世間的には注目されていなかったからこそ少人数プロジェクトを動かせた(丸山氏)、といった点を挙げた。
また、これまでに実装されたXML応用技術として何が優れているかという問いに対し、村田氏は「Atom」を挙げた。Atomは、現在は主にブログのフィード配信のためのプロトコルとして利用されているものであるが、出版やコンテンツ編集のための仕様も定義されている。また、その拡張性の高さから、Googleカレンダーなどにも応用されている。
丸山氏は「SOAP 1.1」とXMLベースのドキュメント生成ツールである「SmartDoc」を、岡部氏は企業のディスクロージャー情報をXMLで標準化する「XBRL」をそれぞれ挙げた。
XMLの本質は何かと問われ、村田氏は「XMLはあくまで一般解なので、レガシーなところも引きずっていたり不便なところもあるが、標準がしっかりしているので、いろいろなツールを簡単に作れるなど裾野が広い。少なくとも今から25年は持ちそう」と答えた。
丸山氏は、TCP/IPが30年活躍していることを例に挙げ、XMLも「そのくらいいくんじゃないか。InteroperabilityこそがXMLの最大の価値であり、21世紀のASCIIとして、時を越えたデータの再利用がXMLで可能になった」と述べた。村田氏は「機会があれば世界に通用する実装をつくれると思う。若いエンジニアに期待したい」とエールを送った。
特別講演の「XMLはここまで広がっている!」では、経済産業省 商務情報政策局 村上敬亮氏が登壇。
日本のIT投資について統計資料を元に説明。国内のIT投資はここ数年間GDP比3~4%くらいで安定した水準であるが、投資マインドは「最悪」。7割の企業がIT投資をしても業務効率化などの守りの投資しかしておらず「部分最適」のままで、残り3割の企業のIT投資は企業全体としては「全体最適」で成功しているが、バリューチェーン全体の最適までには至っていないとしている。
村上氏は、IT投資において何をするのかの「What」は簡単だが、それを実行に移すのは非常に難しいという現実がある、と指摘。「見える化→共有化→柔軟化、というプロセスを通じて、『誰がその情報を使ってくれるの?』というところが解決しないと情報のバリューがアップしない」とした。
また、情報の共有化をまじめにやっていくと、情報がどんどん密結合化していき、他のシステム内の情報と接続しにくくなるという問題があり、これを解決するときにXMLの出番があるのではないか、と説明。XMLによって、硬直しがちな業務プロセスの柔軟化、しなやかに接続可能なデータ連携の実現が可能になるとした。そして、5月に行われるIT経営協議会やCIO戦略フォーラム活動で、IT投資を活性化させるために、国として取り組むべき課題や対応策を話し合っていきたい、と述べた。
この他、XMLコンソーシアムの活動報告や、XBRLなどのXMLの活用事例などの講演が行われ、参加者は熱心に聞き入っていた。