SHOEISHA iD

※旧SEメンバーシップ会員の方は、同じ登録情報(メールアドレス&パスワード)でログインいただけます

EnterpriseZine(エンタープライズジン)編集部では、情報システム担当、セキュリティ担当の方々向けに、EnterpriseZine Day、Security Online Day、DataTechという、3つのイベントを開催しております。それぞれ編集部独自の切り口で、業界トレンドや最新事例を網羅。最新の動向を知ることができる場として、好評を得ています。

直近開催のイベントはこちら!

EnterpriseZine編集部ではイベントを随時開催しております

EnterpriseZine(エンタープライズジン)編集部では、情報システム担当、セキュリティ担当の方々向けの講座「EnterpriseZine Academy」や、すべてのITパーソンに向けた「新エバンジェリスト養成講座」などの講座を企画しています。EnterpriseZine編集部ならではの切り口・企画・講師セレクトで、明日を担うIT人材の育成をミッションに展開しております。

お申し込み受付中!

紛争事例に学ぶ、ITユーザの心得

旭川医大事件―プロジェクト管理義務の限界

 この連載でも何度となく取り上げてきましたが、ITを導入するプロジェクトを実施する際、ベンダにはプロジェクトを円滑に運営する為、ユーザ側に様々なことを働きかける義務があります。例えば、ユーザがいつまでたっても要件の追加・変更等要望をやめてくれないとき、「いい加減、要件を凍結してくれないと納期は守れません、お金だってかかります。」と申し入れ、要求を拒絶したり、代替案を出したり、あるいは追加費用の見積もりやリスケジュール等をユーザに申し入れる義務 (権利ではありません。) があるとするもので、これを怠ってプロジェクトが失敗すると、プロジェクト管理義務違反という不法行為に該当してしまうというものです。

本連載がセミナーになります! 
■■■民法改正!判例に学ぶIT導入改善講座―失敗しないプロジェクトの掟■■■ 
主催:翔泳社 2017年12月7日(木) 19:00~21:00 @ベルサール九段   
詳細・お申込みはこちら→ http://event.shoeisha.jp/seminar/20171207/

ユーザの要件追加変更を制御するのはベンダの役割?

 この考え方は平成16年3月10日に東京地方裁判所が示して以来、IT紛争に関する一つの定番となり、例えば有名なスルガ銀行と日本アイビーエムの裁判でも取り入れられました。

 <<参考:プロジェクト管理義務の例>>
  • ユーザから追加の要望があれば、それがプロジェクトに与える影響を考慮し必要であれば、納期やコストの変更を申し出る。
  • 必要に応じて代替案を提示し、元の案とメリットデメリットを比較検討する。
  • プロジェクトにおけるユーザの役割を説明し、十分に関与する
  • プロジェクトの進捗、リスク、課題等を管理し、問題があればユーザも巻き込んで解決を主導する。 等

 しかし実際にシステム導入プロジェクトに入ってみると、このベンダのプロジェクト管理義務を果たすのは相当に困難だと言うことが分かります。ベンダにとってユーザは”お客様”です。プロジェクトの進行を妨げかねない要望も、むげに断ることはできませんし、まして追加見積を出すことなど顧客満足度を考えると、そうそう簡単にはできません。結局は我慢して飲んで、最悪、スケジュールが守れないときにはユーザに ”許してもらう”、お金が足りなければ赤字を背負って、話の通じるユーザなら追加開発時に少しだけ上乗せしてもらう、といったことを落としどころにする例が多いようです。実際、前出の判決の話をすると、多くのベンダからは「これは現実的ではない。」といった悲鳴が良く聞かれるのも事実です。

 一方のユーザサイドからこのプロジェクト管理義務を見るとどうでしょうか。ベンダがこの義務を果たすためには、ユーザにも協力義務があり、そこそこ我慢も必要ではありますが、極端な話、ベンダ側がYesと言ってくれる限り要望を出し続けられるともとれる、この考え方は自分達のワガママを肯定してくれるものと捉えることも出来るわけですから、少し安心したという方もいるかもしれませんね。

次のページ
プロジェクト管理義務の限界

この記事は参考になりましたか?

  • Facebook
  • Twitter
  • Pocket
  • note
紛争事例に学ぶ、ITユーザの心得連載記事一覧

もっと読む

この記事の著者

細川義洋(ホソカワヨシヒロ)

ITプロセスコンサルタント東京地方裁判所 民事調停委員 IT専門委員1964年神奈川県横浜市生まれ。立教大学経済学部経済学科卒。大学を卒業後、日本電気ソフトウェア㈱ (現 NECソリューションイノベータ㈱)にて金融業向け情報システム及びネットワークシステムの開発・運用に従事した後、2005年より20...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

この記事は参考になりましたか?

この記事をシェア

EnterpriseZine(エンタープライズジン)
https://enterprisezine.jp/article/detail/10056 2017/11/10 06:00

Job Board

AD

おすすめ

アクセスランキング

アクセスランキング

イベント

EnterpriseZine(エンタープライズジン)編集部では、情報システム担当、セキュリティ担当の方々向けに、EnterpriseZine Day、Security Online Day、DataTechという、3つのイベントを開催しております。それぞれ編集部独自の切り口で、業界トレンドや最新事例を網羅。最新の動向を知ることができる場として、好評を得ています。

新規会員登録無料のご案内

  • ・全ての過去記事が閲覧できます
  • ・会員限定メルマガを受信できます

メールバックナンバー

アクセスランキング

アクセスランキング