四国にいながら海外オフィスのような工場
吉田さんが現在所属するヴィームはデータのバックアップに関するソリューション「Veeam availability Suite」を提供しており、どのような環境でもデータ損失を確実に回避できるようになっている。また迅速に高い確率で復元できるため、RTPO(目標復旧時間および目標復旧時点)は15分未満を実現している。2017年のガートナーマジッククワドラントで同社は「リーダー」に格付けされるなど頭角を現してきている企業だ。
一方、吉田さんは多くの転職をしつつも、ほぼずっとバックアップに関連する業務に携わってきた。これまでの道筋を追ってみよう。
大学は工学系だったものの、あまりコンピュータには携わらなかった。就職氷河期のなか、就職先はオフィス機器のカスタマーサポートでシステム係に配属される。社内インフラ保守とまではいかないが、それに近い。パソコンの基本的な知識はここで職場の先輩に教えてもらい習得した。
少しすると実家に近い四国に移り、当時ハードディスクで有名な外資系メーカーに転職する。ここは日本企業とのつながりもあり、ハイエンドのハードディスクの製造拠点となっていた。
四国とはいえ、オフィス内は外国人技術者が常に入れ替わり、まるで海外にいるかのような雰囲気だった。「日本語の看板なんてなかったですから」と吉田さんは笑う。英語が標準語なので当然のことながら英語力は必須。そこで会社は吉田さんに英語力をつける機会を与えてくれた。数ヶ月間のシンガポールオフィスでの勤務だ。語学学校にも通うため、実質的には語学研修といっていい。どっぷり英語漬けの環境で英語力を身につけた。
帰国すると吉田さんは業務で使うデータ保全も任された。ファイルサーバーの保守やバックアップなどだ。データはログデータなど製品の品質管理に関するもので、業務に必要な間はバックアップし、その期間を過ぎると別の場所にデータを移すなど基本的なバックアップ業務を経験した。
この企業で吉田さんは英語力、バックアップ業務、ハードディスクの仕組みなどを学ぶことができた。吉田さんのキャリアで見ると、ここが本格的な出発点となる。
何年かすると同社は買収され、四国工場は閉鎖が決まった。吉田さんはこれを契機に転職を考えた。ここで身につけたITのスキルと英語力をいかせる会社を探し、バックアップソフトウェアを開発する企業に転職を決めた。
勤務地は東京。「やりたいことができる会社を探したら東京しかありませんでした」と吉田さんは言う。四国から離れるとはいえ、オフィスはまるで海外だったため、国外から国内に戻るような感覚かもしれない。