SAPのAIはインテリジェントエンタープライズがキーワード
2018年1月からSAPのAIに関する製品、サービスのブランド「Leonardo」を担当することになったSAP 常務執行役員 デジタルエンタープライズ事業副統括の宮田伸一氏は、現状のSAPの状況に対して第二の創業期的なモメンタムを感じているという。それを表しているのが企業における「Run」と「Win」という2つの業務領域に対応するSAPのソリューションだ。Run部分は効率化や標準化を行うことであり、SAPがERPのアプリケーションの提供でもともと得意としてきたところだ。ここは現在、「SAP Cloud Applications」と呼ばれる製品群で対応している。
Winと表現される領域は、Run領域から生まれるデータを使い新たなインサイトを得るところだ。得られたインサイトをRunに戻すことで、Run領域のさらなる効率化にもつながる。「RunとWinは一体のものです」と宮田氏。具体的にはRunはSAP S/4 HANAやSAP Hybris、SAP SuccessFactors、そしてConcurなどで実現する。WinについてはSAP Leonardoのブランドのもと、IoTや機械学習、アナリティクスの技術を活用し実現することになる。
さまざまなRunのアプリケーションから生まれるデータを使い、Win部分ではIoT、機械学習、アナリティクス、デザインシンキングなどのLeonardoの技術要素を用いてインテリジェンスを生み出す。Leonardoの技術については、「すでに700を超える製品群があります」とのこと。
Leonardoには機械学習アプリケーションの「ML Application」、IoT、ビッグデータ、アナリティクス、ブロックチェーンなどの技術を組み合わせて実現する「Connected Solutions」、そして業種別にパッケージ化したテンプレートモデルとなる「Industry Accelerator」の3つの主要なポートフォリオがある。
この中でも今ホットなのが、ML Applicationだ。機械学習やAIが話題とされる際に、現状SAPの名前が挙がることは少ない。しかし「AI機能は今やS/4 HANAにもどんどん組み込まれています。そういう意味では、企業向けアプリケーションではSAPはAIのトップベンダーとも言えます」と宮田氏。SAPには確固たる実績のあるERPアプリケーションがある。そこに機械学習技術を埋め混んでいくアプローチをとることで、ビジネスプロセスの中でAIの技術が活用できる。その結果、ビジネスの現場にAIや機械学習の価値をすぐに提供できるというわけだ。
「業務の中ですぐ使えることに価値があります。それが製品の中でアップデートされた機能として出てきます。SAPのAIは、技術の実験などとは違います。なので、企業向けのAIではSAPはトップランナーだと言えるのです」(宮田氏)
またSAP ERPを利用している顧客には、すでに機械学習やAIで活用できるデータが溜まっているのも優位性だと指摘する。改めてデータを集めなくても、それらを使いAIから価値を得るアプローチをとれるのだ。ERPのデータであれば整理されているので、クレンジングやデータ加工などの手間もなく、そのままアナリティクスに利用できるのも利点だ。
もう1つ、ERPアプリケーションと製造現場の生産ラインなどをつなぐ際にも、AI技術は使える。需要予測などを機械学習技術などで行い、その結果をすぐに生産ラインの仕組みに入れていくようなアプローチだ。これができるのも、SAPのERPが製造業の業務にすでにしっかりと組み込まれているからこそ容易に実現できる。これはSAPのAI、機械学習が、PoCや実証実験止まりで終わるのではなく、ビジネスを実践する現場に近いところにある。
「インテリジェントエンタープライズがキーワードです。エンタープライズですぐにAIを活用できるのがSAPです。さらにERPにすでに溜まっているビッグデータを使えるところが、他と違うところです」(宮田氏)