NTTデータの「既存資産のデジタル融合」戦略
「NTTデータといえば既得権益の会社と思われがちだが、DX化への流れは避けられない」
3月7日におこなわれた会見で、同社のNTTデータのシステム技術本部の本部長 冨安寛氏はこう述べた。現状10%に満たないDX関連の売上を、2020年には60%にしていくのだと決意を語った。
しかし、これまで官公庁向けの大規模システムや金融などのシステムを年間2000件受注してきたNTTデータにとって、DXは「諸刃の剣」だ。新しい価値の創出につながる反面、売り上げや利益の減少につながるからだ。とはいえ、IT投資が縮減しビジネスの停滞を阻むという業界全体の「負のスパイラル」を打ち破るには、DXに向かうしかない。そのための過渡的な戦略が「既存資産のデジタル融合」なのだという。
「DXテクノロジーを活用して構築した場合、フルスクラッチの開発に比べると4分の1のコストで済む。SIerや製品ベンダの収益構造は大きく変わる。NTTデータ自身も変革が必要」(冨安氏)
ではどのようにして、既存のIT資産をリフトさせていくのか。長年積み上げてきた日本企業のシステムは、環境依存性が高く、機能追加や局所的な改善の繰り返しにより乱立・肥大化している。こうした重いIT資産を「最適化・軽量化」するところから始めていくのだという。そのために、NTTデータが注目しているのがコンテナのテクノロジーだ。なかでもPivotalのCloud FoundryやレッドハットのOpenShiftには注力しており、両社との協業をおこなっている。
「通常の仮想化よりもさらに軽量化できる技術としてコンテナには大いに可能性を感じている。本格的に基幹システムをリフトしてコンテナ化するのは日本ではまだこれから。ここに追随しようと技術の整備を急いでいる」(冨安氏)
こうした「コンテナ化」と並行して進めているのが、「データの民主化」だ。サイロ化していた多種多様なデータソースを集め、「データレーク」に格納し、一元管理する。そこで、クレンジングやデータ意味付け、秘匿化やセキュリティを施し、構造化、非構造化を問わず各種データを透過的に検索・活用できるようにするという。
「HadoopやSparkを用い、データを収集し、バッチ処理とストリーム処理、サービスの3つの層で集計・分析をおこなう『ラムダアーキテクチャ』を進化させた強力なリファレンスアーキテクチャを用意している。NTTとトヨタ自動車でおこなっているコネクテッドカー開発のプロジェクトでもこのリファレンスアーキテクチャを使っている」(冨安氏)
また国内技術者の減少と、オフショアの単価の高騰、超高速開発やAPI連携による開発方法の高速化などの「SIの環境変化」も見逃せない。まずはDX時代の開発人材の育成が課題だと冨安氏は言う。SIerのベテランといえば、これまでは中の人間を束ねる「プロジェクトマネージャー型」が主流だったが、今後はよりクライアント企業と共創するタイプのリーダーが必要となる。またエンジニアも「フルスタック型」をどれだけ集められるかが課題だ。NTTデータとしては、DXに親和性の有るアジャイル人材を年間1500名育成し、顧客も巻き込んだ実案件OJTによるトレーニングを進めるという。