マイクロソフト米国本社の前年度決算は、売上がグローバルで前年比14%増の1,104億ドルとなり、始めて1,000億ドルを超えた。その中でコマーシャルクラウドの売上は230億ドルとなり、これは前年比56%増となっている。クラウドビジネスの成長率は、Amazon Web ServicesやSalesforce.comなどの年間成長率よりも高いと平野氏は自信を見せる。実際マイクロソフトのクラウドビジネスは好調だ。出遅れた感のあったSaaSのDynamics 365も、61%増と高い伸び率を見せている。
日本のクラウドビジネスはグローバル以上に好調だ。日本マイクロソフトのビジネスは、2006年度から2016年度の成長の2倍を、平野氏が社長に就任した以降の2年間で達成している。
そんな日本の成長要因の1つが、日本マイクロソフト自身の変革が進んだことだ。ビジネスモデルを変革して、WindowsやOffice製品のライセンス販売から、クラウドへのシフトが順調に進んだ。この変化により、顧客のIT部門と「新しいビジネスモデルを考える機会」が増えた。
2つめの成長要因として挙げたのが、働き方改革のリーディングカンパニーとしての認知度向上だ。この領域では、既にさまざまな成果を出している。そして3つめは、クラウドの各種サービスラインナップ、インテリジェントテクノロジーの充実もある。これらを従来マイクロソフトが提供してきたエンタープライズのソリューションと結びつけられたことで、新たなデジタル変革の時代に顧客から信頼されるパートナーとして認められるようになった。
AIに対する倫理観をしっかりと持ってテクノロジーをさらに進化させる
2020年までに世界ではさらにコンピュータ化、デジタル化がなされ、膨大なデータが毎日配信されるようになる。大量データに対しインテリジェントなテクノロジーを適用していくことで、企業は新たな価値を生み出す。その際には、クラウドだけでなく「エッジもインテリジェント化され、クラウドと有機的に連携されます」と平野氏は指摘する。
このエッジも含めた新しいインテリジェントの世界を実現するために、マイクロソフトはテクノロジーカンパニーとして最大限の投資を続けている。特に今注力しているのがMixed Reality、AI、そして量子コンピューティングの領域だ。これらテクノロジーは既にかなり成長しており、画像認識、音声認識、文章読解、機械翻訳などは人間と同等かそれ以上の成果を提供できている。
「AIやテクノロジーが発展しわくわくしています。それと同時に責任も出てきます。そのためプライバシーやサイバーセキュリティには、マイクロソフトとして100%コミットし安心して使ってもらえるテクノロジーを提供します」(平野氏)
特に今後は、AIに対する倫理観が重要になる。そのために「プライバシーとセキュリティ」「透明性」「公平性」「信頼性」「多様性」「説明責任」という6つの原則を定め、それに基づいた技術開発をマイクロソフトでは行っている。このAIの倫理に関しては、マイクロソフト1社で取り組んでいるわけではない。アマゾン、フェイスブック、グーグル、IBMらと「パートナーシップ on AI」という非営利団体を発足し、連携して取り組んでいるのだ。
今後の日本マイクロソフトを考えた際には、日本の社会変革に貢献できるかが大きなベースになる。この実現のためにインダストリーイノベーション、ワークスタイルイノベーションの次なるフェーズ、それとライフスタイルイノベーションという3つのイノベーションを考えているとのこと。
特にインダストリーイノベーションでは、少子高齢化、労働人口が減る中で日本企業のグローバルでの競争力を高める取り組みを行う。その中では、従業員がやりがいのある働き方ができるようにする。マイクロソフトとしてはこれまでの学びを活かし、それをさらに強化するチーム体制を作る。たとえば企業に対するデジタルアドバイザーチームの人数を増やし、業種に特化した営業チームも増強する。
これら業種別のアプローチは、パートナーとも共有していく。パートナーの持っている業界に特化したソリューションと、マイクロソフトの営業担当の動きをマッチングしていくのだ。もう1つ力を入れるのが、政府、ガバメント領域だ。日本政府からもクラウドファーストの方針が出ていることもあり、それに合わせた営業体制の強化も行う。こちらについては、秋くらいに具体的なプランを発表する予定だ。