データドリブンを実践しているのはスタートアップ企業だけではない
いまや、企業にとってデータがもっとも大事な資産と言っても過言ではない。経験や勘ではなくデータ資産を使い、ビジネスの意思決定の判断材料の1つとする。それがデータドリブン・ビジネスだ。その実現にはビジネスプロセスをデジタル化し、そこから生まれるデータを分析できるようにしなければならない。そして分析から得られた知見を「業務に組み込み、業務を変えるところまでやります。あくまでも業務を変えることが目的です」と立山氏は言う。
ただこういった取り組みは、ベンチャー企業だからこそできると言われがちである。しかしながら、長くビジネスを行っている大企業でも可能だと立山氏。既にビジネスを行っている企業では、デジタル化で既存ビジネスの無駄をまずは削減する。それで生まれたリソースや時間などの余裕分を、新たなイノベーションに回すのだ。
こういったアプローチで実践している企業は、イノベーションを起こし成功しやすい。たとえばレンタカー会社のハーツではOracle Databaseを用い、貸し出している高級車をセキュアかつ効率的に管理する仕組みを構築した。この仕組みを活用して、まずはコスト削減を実現。それだけに止まらず、顧客の取り引き履歴やこの仕組みから得られる高級車のリアルタイムな在庫状況の情報を連携させ、貸し出し業務を行うオペレーターが優良顧客にタイムリーに高級車へのアップグレードなどを提案できるようにしたのだ。このようなデータ活用で、顧客満足度が向上し、ハーツの新たなビジネス変革につながっている。
クラウドで安価に手間なくデータを溜め活用できる
多くの企業には、既にデータウェアハウスのようなデータ分析基盤があるだろう。しかしながら、それがイノベーションに十分活用できている企業は多くない。「データウェアハウスは金食い虫で、管理の手間も大変です。そのため情報システム部の立場からは、使わないデータはなるべく入れたくない、となります」と立山氏。そうなるとビジネス現場が新たなデータ活用をしたいと考えても、欲しいデータがデータウェアハウスには入っていないことに。つまりは新たな分析を行いたいと考えても、かなり苦労しないと必要なデータが手に入らない。苦労してデータを集め分析できるようにするには、かなりの時間と手間がかり、結局はデータウェアハウスを活用し切れていないのだ。
そのような課題を抱えていたところに、新たな解決策としてクラウドのサービスが登場する。クラウドのサービスを使えば、データを蓄積し管理・活用する手間とコストが大きく下がる。たとえば「クラウドのオブジェクトストレージであれば、1テラバイト当たりの価格が25.5ドルほどです。ここまで安ければ、蓄積するのを諦めていたデータもどんどん溜めて活用したほうがいいとなります」と立山氏。
Oracle Cloudは他のパブリッククラウドより後発ということもあり、先行するクラウドサービスよりもかなりリーズナブルな価格設定となっている。つまり、Oracle Cloudのような新しいサービスを活用すれば、あると嬉しいデータを保持しておくコストと手間がかなり小さくなる。欲しいデータをどんどんクラウドに集めるコストは、データを保持しないことで発生するビジネス機会損失の金額よりもかなり小さい。となれば、データドリブン・ビジネス実現のためにも、クラウドにデータを溜め活用しない手はない。
クラウドサービスを用い、取得できるデータの幅を広げ、それをライトタイムに活用できるようにする。たとえば、従来月次や日次などのタイミングでデータを見ていた状況から、新たにストリームデータを取得し必要なときにリアルタイムにそれを参照してビジネス上の判断ができるようにする。在庫状況を日次でしか回答できなかったものが、1時間以内、あるいはほぼリアルタイムで回答できればビジネスは変わるだろう。
他にも小売店舗などでよく行われるRFM(Recency:最近の購入日、Frequency:来店頻度、Monetary:購入金額規模)分析も変わる。RFM分析では顧客が何を購入しどれくらいの頻度で来店しているかといった、過去の情報は明らかになる。しかしながら、来店はしたけれども購入しなかった顧客のことは分からない。そこで、購入しない顧客の情報を取得する。たとえば、スマートフォンのアプリケーションなどを使えば、位置情報などから来店状況を把握できる。そういった技術を使い、RFM分析の幅を広げ、次に商品を買いそうな人を抽出し、新たなアクションに結びつけるのだ。
Oracle Autonomous Data WarehouseでIT部門に手間をかけずに小さくデータ活用が始められる
従来このような分析をする際には、顧客の行動ログのデータと顧客の属性データなどをJOINして集計し、さらに統計処理などを用い高度な分析を行う。データが増えれば、新たな購入に結びつく人を抽出する分析にはかなり手間がかかるだろう。今なら、購入率の高そうな人を効率的に見つけるのに機械学習技術が利用できる。機械学習を使えば、購入率の高い人を抽出することも容易だ。機械学習技術がすぐに利用できれば、データドリブンのビジネスも実現しやすくなる。
しかしながら、それを実現する際には、さまざまなデータを集めるなど非効率な手作業が発生するのが普通だ。そういった作業は、多くの場合IT部門に依頼する。依頼が発生すれば、タイムリーな機械学習による予測などはなかなかできない。またデータ量が増えると、十分な分析処理性能が得られない可能性もある。十分な性能を得るにはそれなりのコストが必要であり、先が読めないビジネス変革に対し最初から大きな予算を当てることは難しい。
ビジネス部門が迅速に着手したいデータ活用の課題を解決するのが、Oracle Autonomous Data Warehouseだ。「Autonomous Data Warehouseなら分析のためのデメリット全てを打ち消し、メリットだけを抽出できます。5分もあればチューニング済みのデータベースができあがるのです」と立山氏。Autonomous Data Warehouseを使えば、IT部門に手間をかけずに大量で多様なデータを蓄積して活用できる。Autonomous Data Warehouseは、Oracle Databaseのエンジニアが手間をかけチューニングしたデータベースよりも、2倍以上の処理性能を発揮している例もある。
さらにAutonomous Data Warehouseは、時間単位の課金で利用できる。そのため、新たなデータ活用のための予算を抑え小さくスタート可能だ。またオートスケール機能もあり、大規模な処理性能が必要なときに自動で性能を最適化できるとも立山氏は言う。
Oracle Autonomous Data Warehouseは、大企業のみならず中小企業でも導入が進んでいる。たとえば、血液検査や血圧センサーデータなどから患者の知見を医師に提供しているQMP社では、Oracle Autonomous Data Warehouseを使い、さまざまなデータを統合して迅速な分析環境を新たに実現した。これにより患者の病気のリスクを下げることが可能となり、結果的にビジネスが9倍へと急成長している。このような成功事例が、世界中で既に数多く生まれていると立山氏は言う。
Always FreeでOracle Cloudの良さをすぐに試して欲しい
もう1つ、すぐに新たなデータ活用ができるアプリケーション「Oracle Synopsis」も紹介された。これはAIや機械学習の技術をより身近なものにするもの。Oracle Synopsisは無償で提供されるスマートフォンのアプリケーションで、スマートフォン上にあるデータをすぐに可視化できる。「Synopsisが自動でデータを集計してくれます。Excelのデータなどもスマートフォンの上ですぐに可視化し見ることができます」と立山氏。極めて強力なデータ分析基盤だけでなく、データを身近に活用できるようにする仕組みについても、Oracleでは積極的に開発し取り組んでいるのだ。
最後に立山氏は、データドリブン・ビジネスを実現するための3つのポイントを改めて強調した。1つがデジタル化から始めて、分析した結果を業務に組み込むところまで実践すること。2つ目はデータドリブン・ビジネスの実現には改めてデータが重要であり、クラウドによりデータを安価に蓄積できるのでデータの幅を広げ、それをライトタイムに活用できるようにすること。3つ目はデータ活用の新たな課題は、Oracle Autonomous Data Warehouseが全て解決できること。この3つを憶えておいて欲しいと立山氏は言う。そして、OracleではAlways FreeというOracle Cloudのサービスを時間制限なく無償で利用できるサービスを提供している。これを活用して、是非Oracle Cloudの良さを実感して欲しいと言いセッションを締めくくった。