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実質、準委任契約なのにシステムの完成責任を負わされる 働いてもお金を貰えないベンダの悲哀

裁判所はどう判断したのか

 さて、このケースについて皆さんはどのようにお考えでしょうか? 請負契約であるか準委任契約であるか、裁判所はこれについて以下のような判断を下しました。

 (東京地方裁判所 平成27年6月25日判決より)

 本件請負契約の報酬額は,ベンダの社員一人が本件改修作業に従事していた期間は月額80万円と、二人が本件改修作業に従事した期間は月額160万円とそれぞれされていた

 (中略)

 本件基本契約書における本件改修作業の内容が「対象ソフトウェアの開発に係る業務、及びそのソフトウェアの運用保守に関する技術支援等を行うものである」と定められていることや、本件請負契約の終了後に生じた不具合についてユーザがベンダに対してその対応を求めることがなかったことをも併せて考えれば、本件改修作業の内容は、本件個別契約の各契約ごとに、それぞれ1か月間又は2か月間、担当者を派遣し、ベンダとの間の協議を行いつつ、当該協議に基づく本件POSシステムの改修作業に当該担当者を従事させるというものであったと解するのが相当である。

 裁判所は、このように述べて、この契約は請負ではないと断じました。文中に派遣という言葉が出てきますが、それは作業の形態の話であって、作業の内容についてはユーザとベンダの間の協議に基づいて行うという主旨のことが書かれているので、私見ですが、これは準委任契約と考えるべきかと思います。

 この判断材料は、作業の人数と期間に基づいて金額が決まっていること、作業内容が支援とされていること、実際には不具合についてユーザから改修するように要求がなかったことが挙げられます。

 またユーザ側は、契約書に書かれた「動作保障された実行形式プログラム」を納品物として定めてある点を主張し、これは請負契約であり成果物に不具合がある以上、対価を支払う必要はないとの論を展開しましたが、裁判所はこれについても以下のように述べて退けました。

 (東京地方裁判所 平成27年6月25日判決より)

 確かに(中略)「動作保障された実行形式プログラム」が納品物である旨が定められて(中略)(いる)ことを認めることができる。しかしながら、納品物に関する定めは、同項の前半部分が規定する本件改修作業の内容に関する定めを受けて、その納品時におけるプログラムが動作保証をされたものであることを規定したものにすぎず、納品後に不具合の生ずることが一切ないことを保証する趣旨のものであると解することはできない

次のページ
偽装請負は、請負契約と準委任契約の悪いところ取り

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この記事の著者

細川義洋(ホソカワヨシヒロ)

ITプロセスコンサルタント東京地方裁判所 民事調停委員 IT専門委員1964年神奈川県横浜市生まれ。立教大学経済学部経済学科卒。大学を卒業後、日本電気ソフトウェア㈱ (現 NECソリューションイノベータ㈱)にて金融業向け情報システム及びネットワークシステムの開発・運用に従事した後、2005年より20...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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