新しいものはすぐ取り込む「DCAP」とユーザーコミュニティの重要性
福田氏:友岡さんは新しいツールはまず使ってみるという柔軟でスピード感のあるスタンスで臨まれていると思いますが、一方でテクノロジーの進化も速く、新しいカテゴリーや製品がどんどん生まれる中で、どのように情報収集して自社に合ったテクノロジーを選ばれているのですか?
友岡氏:PDCAではなくDCAP(Do→Check→Action→Plan)のサイクルでまずは使ってみて、その良さを感じていくようにしています。これだけ変化の激しい情報化社会では、まず実行することで経験を得ることが重要です。未経験のものには知識ではなく、経験を通して学ぶほうが圧倒的に多くの情報が得られます。
なにより導入することで、ユーザーコミュニティに参加できるのも大きい。先行している方々がいらっしゃるので、情報収集が容易になります。信頼できる方と出会えれば、情報の精度も上がり、さらに良し。もちろん、ただ受け身ではだめ。コミュニティでの関係性を高めるために、私たち自身も実際に導入した結果について皆さんにアウトプットしていくことは欠かせません。
福田氏: SaaSが普及して、以前のように初期投資をかけてシステム構築をしなくても使ってみることができるようになりました。いたずらに検討に時間をかけるのではなく、まずやってみるというスピード感は大事だと思います。同時にとりあえず使い勝手を試してみるという目的でなく、ビジネス上の課題と連動していなければならないと思います。
友岡氏:その通りです。私たちも、自社のビジネスを推進していくうえで、こういったものがないかと常に仮説を立てて情報収集をしています。だからテクノロジードリブンではなく、ビジネス課題とテクノロジーの両方を集めて、解決できない問題を解決できるか考える。PoCであってもテクノロジードリブンではなく、ビジネス的なPoCでなくてはならないのです。
そしてビジネス課題の解決ができそうなテクノロジーがあれば、まずは導入してみる。直近だと3つのビジネス課題の解決手法としてRPAを導入してみました。3つともいい結果が出たのですぐに本導入しました。
福田氏:3つのビジネス課題は一つの部門の中のことでしょうか?
友岡氏:いえ、異なる領域のビジネス課題で、共通のパターンがある3つにRPAをあててみた形です。部門が異なっても、ビジネスの中に共通のパターンのようなものがありますよね。そのパターンを見つけ出せば、それをどのように効率化するとビジネスの推進に寄与できるかを考えられる。
こうした横展開ができるパターンの改善をテクノロジーで実行していくこともIT部門の仕事です。DCAPにおけるPは、発見したパターンとその改善手法がビジネスの中でどこまで横展開できるかを検討するPでもあります。
福田氏:各部門の枠組みを超えたIT部門からの提案について、社内で反対などはありますか?
友岡氏:全体としては成功だけど、部分では成功といえないこともあります。改革が大きければ大きいほど、反発する人も増える。ただ、そのほうがイノベーションのジャンプも大きいと思っていて、ここだけの話、私は提案をして、半分くらいが反対するようだと「いいことありそうだ」と思うようにしています。
福田氏:そのマインドセットは重要かもしれません。新しいことをする時は、いつも反対する方がいる。それは間違っているわけではなく、現在の不確かな経済社会では前に進むことも、足を止めることも一つの選択肢。私たちが支援するSaaSのサービス群も、新しいサービスばかりなのでその良さを知ってもらうための努力はし続けないといけないと痛感しました。最後に、コロナ禍の中、CIOに求められる役割や期待はさらに高まったと感じていますが、当事者である友岡さんから見て、CIOにはどのような資質が求められるのでしょうか?
友岡氏:ITの面白さは全部に関われることです。マーケティングも経理も人事も、すべてです。だから私のように飽きっぽい人に向いている職業です。変化も激しく、いろんなことでワクワクしたい人にはぴったりでしょう。なにしろ3ヵ月前の正解が今日では不正解になる世界ですから。毎日が変化に満ちて、社会全体のOSみたいなものをアップデートできている気持ちになれる。そのことを「粋」に感じられるような人が、CIOとして日本のビジネストランスフォーメーションを引っ張っていくのだと思います。
福田氏:本日はありがとうございました。