モビリティ変革コンソーシアムでオープンイノベーションのためのエコシステムを構築
JR東日本では69線区、1667駅があり、5万4880人の社員が働いている。利用客数は、コロナ禍以前の2019年は1日当たり1,770万人となっている。列車を日々運行する鉄道事業を中核に、生活サービス事業、IT・Suica事業、国際事業と鉄道関連資産を生かした幅広い事業を展開する。JR東日本では発足から30年、当初は傷んでいた鉄道インフラの再生、鉄道の復権を中心にビジネスを進めてきた。
そして今は人々の働き方の変革があり、少子高齢化などの転換点もある。「これからの10年は人が生活する上での豊かさを得るために、重層的でリアルなネットワークと交流の拠点となる駅などを生かし、新たな価値を提供していきます」と言うのは、東日本旅客鉄道株式会社 技術イノベーション推進本部 データストラテジー部門 次長の入江洋氏だ。
JR東日本では、「ヒトの生活における『豊かさ』を起点とした社会への新たな価値提供」へと「価値創造ストーリー」を転換していく全社の基本方針「変革2027」を掲げている。そして入江氏が所属する技術推進本部では、変革2027に基づき技術革新中期ビジョンを掲げIoT、ビッグデータ、AIなどの技術で、モビリティ革命を目指している。
モビリティ革命には、鉄道事業で最も重要な安全・安心、サービス&マーケティング、オペレーション&メンテナンス、エネルギー・環境という4つの軸があり、様々な技術を取り入れて社会の課題に取り組むこととなる。
そしてモビリティ革命のための具体的な施策としては、駅や数多く走行している車両などから得られる多様なデータを一元管理し、分析して課題解決に役立てるようにする。そのためのクラウドプラットフォームの構築も行っている。もう1つは、具体的にモビリティ革命を推進する場の創出だ。それを実現するために、「モビリティ変革コンソーシアム」を2017年9月5日設立している。
モビリティ変革コンソーシアムでは、少子高齢化や地球環境問題など、解決が難しい社会問題をAIやIoT、ビッグデータなどの加速度的に進歩する技術によって解決することを目指している。
そのためにJR東日本だけではなく、オープンイノベーションで取り組むためのエコシステムを作る。「今後の少子高齢化の中、将来の公共交通のあり方が今、問われています。こういった喫緊の課題に対し、外部の人と連携してオープンイノベーションで取り組みます」と入江氏は言う。
現状モビリティ変革コンソーシアムでは、4つのワーキンググループの中で17のテーマを設け、実証実験などに取り組んでいる。コンソーシアムの役割は、自分たちだけではなかなか新しいものが出てこないため、コンソーシアム形式で新しいアイデアを出すことにある。そして「鉄道というインフラ事業が苦手とする、アジャイルな開発を実現するこもあります」と入江氏。
そのためな様々な企業、大学などと、目的ごとに12のワーキンググループに分かれ活動している。さらにアセット提供型の連携として、JR東日本の駅や車両などの資産を提供し、現実の場で実証実験ができるようにもしているのだ。