ストレージにはないテープのメリット
ところで「大容量のデータを扱うならクラウド」との考え方もある。しかし、大規模障害なども発生しており、クラウドだけで大丈夫なのかとの懸念もあるため、オンプレミス回帰の話も聞こえてくる。これに対し、大容量データを格納するのに「適材適所でテープストレージも利用されています」というのは、森氏だ。
ほとんど触らないデータのアーカイブには、クラウドが良いとの話もあった。確かに一切ダウンロードしなければクラウドはコストが安い。しかし、いざ大規模なデータをクラウドからダウンロードするとなると、転送費用が莫大にかかることがある。さらに、クラウドでは高可用性ポリシーが適用できない場合もあり、セキュリティ上の規制でクラウドにデータを出せないこともある。これらの要件でオンプレミス回帰があるのは確かだ。
その上でホットデータとコールドデータの問題もある。NASに大量なデータがあっても、利用しているのはほんの一部に過ぎない。生成から1年間は使われるが、それを過ぎるとほとんど触らなくなりコールドデータとなってしまう。逆に、5年後にコールドデータを使いたい場合もあり、その際にNASでは、欲しいデータがなかなか見つからないこともある。これがオブジェクトストレージであれば、タグやメタデータを組合せることで対象データを見つけやすくなるのだ。
コールドデータなら、テープメディアが活躍できると森氏は説明する。テープには堅牢性、安全性があり安価にデータを保存できるからだ。データの保存先としてパブリッククラウドが条件に合わなければ、オンプレミスでテープを活用してコストセーブもできる。テープは1メディアに極めて大容量のデータを保存でき、ハードディスクと違い構造もシンプルでデータを読むのに複雑な仕組みは必要ない。
仮に5ペタバイトの容量があっても通電しておく必要はなく、読みたいときだけ通電するのでエネルギー消費も抑えることができる。また最近はオフラインで保存できることから、ランサムウェア対策でも有効だともいわれる。耐障害性も高く故障率も低いのも大きなメリットだ。「ハードディスクの容量も増えていますが最近は鈍化しており、テープ容量増大のペースはそれよりも大きくどんどん開発しています」と森氏は述べる。