これまでの産業革命をふりかえる
まずは、第一次産業革命から見ていきましょう。
第一次産業革命は18世紀中頃のイギリスで飛び杼の発明による織機技術の改良が成され、綿織物の生産効率が急激に向上し原料である綿糸の需要が急激に高まったことがきっかけとされています。
高まる綿糸需要に応えるように、ジェニー紡績機や水力紡績機、ミュール紡績機などが発明され、今度は綿織物の生産能力を遥かに超える綿糸供給能力が確保されることになりました。そうなると、今度は織機のさらなる改良へのニーズが高まることとなり、結果的に蒸気機関を動力として利用した力織機が発明され、綿織物の生産性が加速度的に向上していきました。綿工業での蒸気機関の利用は、力織機を生産する機械工業や、機械を生産するための鉄工業の需要爆発にも波及し、さらなる技術革新の波が生まれることとなりました。
第二次産業革命はイギリスでの第一次産業革命に追随するかたちで19世紀後半の欧米諸国で起きた技術革新です。19世紀後半には、ドイツで蒸気機関に変わる新たな動力として内燃機関が実用化され、自動車やバイクといった乗り物の大量生産の基盤が作られました。そしてアメリカで電気を利用した発明が相次ぐなど、第一次産業革命以降イギリスの独壇場だった工業生産が徐々に欧米全体へと広がっていき、現在まで続く消費財の大量生産という仕組みが形作られました。
第二次産業革命後は、第一次、第二次世界大戦が勃発し、約半世紀もの間、混沌とした時代が続きましたが、戦争の終息からまもなく始まったのが、第三次産業革命と呼ばれている、20世紀後半に起きたコンピュータの発達とインターネットの普及による技術革新の時代です。
20世紀後半は、ビジネスにおけるコンピュータの活用が急速に進み、コンピュータ制御による生産の自動化が進められるとともに、企業内にある情報がデジタルデータとして蓄積され始めた時代です。この頃から、データ通信やソフトウェア開発を手掛ける企業が続々と立ち上がり始め、今の時代の主役ともいえるIT産業が台頭し始めました。そして、今、議論の的となっているのが、IoTデバイスやインターネットサービスで蓄積されている膨大なデジタルデータを分析することで生まれる技術革新が、第四次産業革命に値するのかどうかという点です。
現在、各国政府はIoTおよびビッグデータとAIが第四次産業革命の核心的な技術革新だとしています。IoTおよびビッグデータは、IoTデバイスで交通量や気象情報、個人の健康状況などをデータとして蓄積する役割を果たすとされています。つまり、IoTおよびビッグデータは第一次産業革命における織布生産量の爆発的な増加を支えた高度な紡績機の発明と類似する役割と果たすと考えられているということです。この文脈では、データというのは第一次産業における綿糸ということになります。
そして、AIはIoTやビッグデータなどで集めたデータを分析し、付加価値の高い情報を生み出す役割を果たすとされています。これは、AIが第一次産業における織機の役割を果たすということを指しており、データという糸を効率的に織り上げ、付加価値の高い情報という布へと変換し売り出すという役割を担っているということを指していると考えられます。これらの技術革新が合わさることにより、第四次産業革命では、ホワイトカラー労働者が担っていた作業の一部を代替する事が可能になるとされています。