第3次AIブームから8年、頓挫したプロジェクトも
2012年、ジェフリー・ヒントン氏が率いるトロント大学の研究チームが開発したディープラーニングを用いたシステムが、著名な画像認識コンペティションで2位以下に大差をつけて勝利したことをきっかけに、多くの企業がAIに期待を込めて様々なプロジェクトを開始してきました。
特に、アーリーアダプターと呼ばれる企業数社は、野心あふれるムーンショットビジョンを掲げ、挑戦を重ねてきました。そして、AI領域への投資は急速に膨らみ、第3次AIブームとまで呼ばれるほどのビジネスにおける一大ムーブメントとなりました。
しかし、第3次AIブームの最初期に打ち立てられたムーンショットビジョンを達成した企業はほとんど存在していないと言っても過言ではなく、ほとんどのプロジェクトが頓挫または方向性の変更を強いられています。
たとえば、アメリカのMDアンダーソンがんセンター<https://www.mdanderson.org/about-md-anderson/foreign-countries/japan.html>では、2013年にIBMワトソンを用いた特定のがんを診断した上で治療計画を提案するAIの実現をビジョンとして掲げ、プロジェクトをスタートしました。しかし、2017年には、プロジェクトでかかった費用が6,200万ドルにまで膨れ上がりつつも実用に向けた成果をあげられなかったことからプロジェクトは保留されることとなりました。上記のような大規模プロジェクトの頓挫が世界各地で起こりつつも、ビジネスにおけるAI活用に向けた取り組みは数多く進められています。
では、第3次AIブームの到来から約8年が経とうとしている今、私達はどのように目標を定め、AIのビジネス活用に向けた取り組みを進めていけばいいのでしょうか? 今回は様々な事例をもとに、ビジネスで力を発揮するAIを開発するためのアプローチについて考察をまとめていきます。
現在活用が進められている3つのAI
AI開発競争が激化している今、多くの企業が自社のビジネス課題に合わせたユニークなAIを開発しています。ニュースなどを見るとそれぞれの個性的な特徴が強調されており、他のAIとの類似点がないようにさえ思えるものもあります。しかし、現在活用が進められているAIが解決している課題を注視すると、AIが解決している課題はいくつかに分類できます。中でも多くの企業で開発、導入が進められているのは以下の3種類です。
- 同種同類の反復作業の自動化
- ビッグデータの網羅的な分析
- エンゲージメントの省人化
それぞれを考えていきましょう。