私、DEC大好きでした
「人は変わることができるか?」――あくまでも仕事上での話しですが、私の中で長年ひそかな研究テーマにしています。新しい部下を得るたびに、どのような方向に変化をサポートできるかを考えています。この原稿は、以前、別のメディアに投稿した内容に、最近得た知識で修正を入れています。
人が変わるというのは、「カフカの変身」のように他のものへ変態するのではなく、その人の考え方と行動や行いが変わるということです。そして、人の考え方と行動や行いが変わると、組織の変化を促します。ビジネス上では、人の行動はプロセスである程度変えることが可能です。しかし、それだけでは人のもつポテンシャルを最大化することができないと考えます。脳が動いていないからです。強力なプロセスの上で、人が自身で考えて能力を発揮する必要があります。
なぜ、変化が必要なのでしょうか。私がこれを痛烈に体験したのは、今は無くなってしまった日本DECに勤務しているときです。DECは、Honestyという言葉が本当に企業文化として深く浸透しており、技術的にも面白い会社でした。1990年の私の入社当時は、飛ぶ鳥を落とす勢いで社員を増やしていました。しかし、「VAX 9000」というメインフレーム級のシステムを出したころから業績が怪しくなり、1993年には初めてのリストラが発生しました。私、DEC大好きでした。
変化できなかった企業の例として、このDECがよく引き合いに出され、その原因は一般的にはPCへの乗り遅れだと言われています。しかし、DECもIntelのPCを扱っていなかったわけでもなかった。また、同じようなビジネス形態であったHPは生き残りました。当時DECの中にいた者としては、UNIXとRISCプロセッサが急進するなか、VAX/VMSにこだわりUNIXを中途半端に扱い、また、VMS上で業界標準にAPIやプロトコルをあわせようとしたのが大きな原因だと感じています。業界標準という言葉は心地よいのですが、周りとほとんど変わりませんよ=差別化がない、ということにもなりかねません。残念ながら、変化への対応が遅れた戦略ミスだったのだと思います。